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犬次とミラを観察してると彼等は楽しそうにお店を回って街を散策してる。うん……たのしそうだ。それに比べて私たちときたら……いったいなにをやってるのだろうって気がしてくるね。最初見つけた時はハラハラドキドキの野次馬根性が出ててテンション高かったけどさ、こうやって追いながら二人を見てると、まあなるようになるでしょ? 的な思いが芽生えてきた。そもそも私は二人がくっつこうがくっつかなかろうがどうでもいいしね。
まあプリムローズの経営者としては正直困るけど……そうなるかはまだわからない。利用できるのなら利用するだけだし、出来なければ……そのときは……
「げっ」
思わずそんな声が出た。なぜなら……なぜなら……なぜか奴がいたからだ。今は社会奉仕というなの強制労働に精を出してる筈だったのに……なんでなんで……
「いやーありがたい。ファイラルから走りづめてて何も食べてなかったんだ」
そう言いつつ、二人のおごりで飯をかっ込んでるのはサイオスの奴だ。二人のデートに無粋にも割り込んだ挙句、飯をおごってもらってその雰囲気はぶち壊しである。まあ二人も緊張が解れたといえば……これからにまだ期待できる。もしかしたら、この後何か大胆な事をするかもしれない。そういうのはちょっと見てみたいし……でもなぁ。
「サイオス……あんつなんで」
私は犬次をちらっと見る。すると犬次はぶんぶんと首を横に振る。知らないか……てかそれはそうだよね。だって犬たちは私たちとずっと一緒にいるしね。マネージャーなんだしそれは当然だ。赤線の奴なら……いや無理か。あいつも一緒にいるしね。まあ赤線は冒険者たちと共に行動させてるんだけどね。だってあいつは私の正体知ってるけど、プリムローズと繋がりがあるわけじゃない。世間的にはね。
だからあいつも犬達と一緒に……って訳にはいかない。マネージャーが私たちについてるのは普通の事。けどただの冒険者と思われてる赤線が私たちと行動を共にするとそれは贔屓とか特別とか思われかねない。だから赤線とはあんまり接触しないようにしてる。外れクジ引いてるよね。むさい冒険者達の中にいるしかないんだし。まあ赤線にも役目はあるんだけどね。けどこんな可愛い子達といられないから結局は外れだよね。
それに犬次なんてデートしてるわけだし。犬一もだけど……
「そういえばこんな所に居ていいのか? プリムローズのメンバーが」
「え?」
サイオスの言葉に皆がびっくりする。ただバクバク食ってた筈なのに……いきなりとんでもない爆弾落としやがった。こいつ……なんで? ミラは変装してる。認識疎外もかけてる。それにサイオスはバカだ。なのに……どうしてミラの事がわかったんだろう? こいつ……ほんとうにわからない奴だよ。さっさと捕まえてもらって送り返そう。私はそう思って通信機を兼ねてるピアスに指を添える。




