表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

312/2448

θ49

 小さな果物を買ってくれた犬次さん。それをお店の人が半分にしてくれた。そのさい「彼女かな?」とか言われた。それを聞いた瞬間、頭が弾け飛ぶかと思った。だって……彼女って……でも男女が二人で歩いてると普通はそう見えるものだよね。私と犬次さんは兄妹って程離れてるようにも見えないし、それに傍目にはオシャレしてるように見えるはず。実際私はオシャレしてる。今までにないくらいに私には今お金がある。

 だからオシャレだってしほうだい。けどいつもはそんな時間なんてなくて……じっさい沢山あっても着る機会なんてそうそうないみたいな? だからいつもは結局着慣れた服を着まわしてた。いつも気合入れてるのなんて、フィリーとシシくらい。あの二人は本当に金遣いが荒い。いつも私に細かい物をたかってくる。同じくらい貰ってる筈で、それで足りないなんて事ありえないのにだ。本当にあの二人は……っていまはそうじゃない。


 私は今日は気合を入れてたという事なのだ。せっかくの知らない町……知らない場所。そして注目を浴びないようにしてくれた。ファイラルではどこに行っても私たちは知られてる。それはとてもうれしいことだ。だってそれがラーゼ様の目的だし。けど、時には静かにしたいときもある。でもそれは贅沢な悩みで……こんな自分が誰かに好かれるなんて……そんなときが来るなんて思わなかったから。


「おいしい……」


 甘い果実が口に広がる。こんな物が普通に食べられる……それも本当に夢みたい。いつだって……毎日、毎朝思う。こんな日々は夢なんじゃないかって。けどこれは夢なんかじゃない。現実だ。そしてこの気持ちも……なんなんだろうこの気持ち。よくわからないよ。だって私はこんな気持ち知らないから。ラーゼ様にひっ張り上げてもらってから、ずっと初めての事ばかり。ラーゼ様と一緒にいるときもなんだか安心感とかポカポカしたものが胸にくるけど……それとこれはちょっと違う? 


 だってすぐに顔が赤くなるし……なんだかちょっと恥ずかしいってのもあるし、けど嬉しいってのもあるような? それから二人で街を歩く。ファイラルほど発展してるわけでもなくて、人も溢れかえるって訳でもない。けど……これが普通だ。ファイラルにいるとあれが普通だと思えるけど……そんなわけないよね。ファイラルでは普通に街を歩いてるだけで私たちの映像が沢山流されてる。CMとかいうラーゼ様が商人と共に始めた宣伝もやってるから結構恥ずかしい。


 けどここではそんなものを見ることはない。あれを傍目から見るのはなかなか慣れないんだよね。私は少し後ろから犬次さんをみる。少しだけ背が高い彼……後ろから見ると背中がおおきいなって……そうおもった。けど背は丸まってて、キョロキョロと辺りを見回してる。実際男らしい……とか全くない。むしろ少し情けなく思ったりもする。けど、こういう人だってことはわかってる。それにそれでも一生懸命なのも知ってる。


 そして私を……私のタオルクンクンしてたことも。実際最初はありえないと思った。こんな私の……けどそれは私の事魅力的に見てもらえてるって事。そう考えると悪い気はしないかなって。いやな気持ちがなくなるとそういう目で見られてるんだってドキドキして……なんか意識しちゃって……


必死に話題を探す犬次さん。そしてそれを私は微笑ましく見る。私はちょっと興味がある風にお店を指さして、犬次さんに助け舟を出す。


「そうですね。行ってみましょうか?」

「うん」


 二人でいるとなんでだろう……なぜかどこでも楽しく感じる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ