θ36
怪しい奴を発見した。屋根の上からギルドを見てたサイオスは監視をギルドからその怪しい奴へと切り替えてた。別にギルドを監視しようとしてたわけじゃない。けど、彼女を発見したから……自然と彼女を守る為に動いてた。
(全く、世話が焼ける奴だ。俺はあの悪党を追わなくてはいけないのに……だが、あれは俺をはめた奴の仲間かもしれない。けど何故にゼラを?)
そんなことを思うが、どのみち奴らをのしてしまえば理由なんてはっきりとする。こそこそと女性を覗くやつなど、大抵殴っても問題ない奴とサイオスはおもってる。
「貴様ら! 一体何をしてる! 悪党か!? 悪党だな!!」
そう言って速攻で屋根を走り距離を詰めるサイオス。目の前のフードを目深にかぶった二人は何やら言ってるがサイオスが止まらないと思ったのか、武器を出してきた。
「悪党と認めたな悪党め!! 英雄である俺が粛清してやる!!」
「何を訳の分からないことを……」
困惑してるフードの奴ら。距離を詰めたサイオスは素早い体の動きで近接攻撃を繰り出していく。だがその攻撃は当たらない。これだけの距離で華麗に交わされるなんて……サイオスは決して弱い訳じゃない。けどまるで完全に見切られてるかのように攻撃は空を切る。
「強いな!」
そんなことを呟いたサイオスはにやりと口角を上げた。強敵との出会いはサイオスにとっては歓喜するべきことなのだ。手をかざしてくるフードの奴ら。その瞬間、何か壁がぶつかったかのような衝撃と共にサイオスは吹っ飛ばされた。詠唱なんて微塵もなかったような素振りでこれだけの魔法……むこうもこちらもどうやらそう派手に動きたくはないらしく派手な攻撃はしない。だが、それではまずいとサイオスは思ってその武器を……
「ない!? そうだった武器は取り上げられたんだった!!」
そう宿で暴れて牢屋にぶち込まれたときに装備一式は取り上げられた。つまりはサイオスの武器はその拳だけという事。
「ふはっふははははははははははは!!」
「な……なんだこいつ?」
突如笑い出したサイオスにフードの奴らが旋律する。
「武器もないのなら引け。命は無駄にするものじゃない」
「なかなかに慈悲深い言葉だな。悪党とは思えない言葉だ」
「いやだがら我らは別に悪党では……」
「悪党は皆そういうんだ!」
フードの奴らはサイオスのその断言に「えー」みたいな顔してる。そしてサイオスは大きく息を吐いて吸って、体内に力を巡らせるように筋肉を伸縮させる。
「貴様らがゼラを見る目……その興味を奪われたような危ない瞳は俺にはごまかせんぞ!」
「妙な所で鋭いな。しかしゼラとは? あれは確かラー」
「うるさい黙れ! 俺は奴を守る責務がある! そういう約束だからな。まあ俺がラーゼ共に歩むその日までは俺はゼラを全力で守るんだ! その為なら……俺は限界を超えられる!」
「もう……なにがなんだか……」
頭を抱えてフルフルとしてるフードの奴ら。だがサイオスはそんなことは気にしない。なぜなら、サイオスはよくその光景を見るからだ。大体の奴らはサイオスと話してるとそうなる。けどサイオスはそれが論破出来てると考えてるのだ。だからサイオスは意気揚々と拳を握る。
「うおおおおおおお俺の拳よ! 全てを砕けえええええええ!!」
サイオスがテンションだけで走り出す。サイオスは信じてる。その拳に砕けないものは今はないと!




