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θ18

「薄紅の髪に唾付き帽子。破廉恥なスカート丈に縞模様の靴下……報告にあった少女というのは君ではないか?」

「知りません? はて、なんのことやら?」


 全く、サイオスがお姫様だっこのままギルドに入るからこんなことに……注目されなかったらむこうもこっちに気づくことはなかったかもしれない。けど気づかれてしまったものはしかたない。なんとかごまかさないと。数人の兵士が私をいぶかしむように近づいてくる。まさかギルドにまで依頼を出そうとしてるとは。まあありえなくはなかったね。そこまで気が回らなかったよ。


「だが、そんな髪色……ほかにそうそういるとは……」


 確かに私のピンクの髪はあんまりいないね。髪色は実際、異世界らしく様々だけど、ピンクっていない。だからこそ薄紅とか言われるわけだからね。髪色を変化させる魔法とか使えればよかったんだけど、私はほら、容姿に絶対の自信があるから、自分を偽るって発想がなかった。まあそもそも私自身じゃ使えないんだろうけどさ。


「その帽子をとって顔を見せたまえ。無実なら、顔を見せても問題ないはずだ」


 ぬぬ……そうきたか。そもそも私には罪なんて一切ないんだけど……ここで帽子を取るとさすがに皆気づくだろう。認識疎外もここまでの注目の中じゃきっと効果ない。認識疎外はちらっと見たときに「あっ」って思うのを無くす程度だからね。今や私たちはこのギルドの注目の的。絶対にばれる。まあ実際、もういいかなって気もする。そこらの奴らにバレたとしても、二度と会うことってそうないし……いまはこの状況が煩わしいから、私がラーゼだといえば、それだけで終わることだ。


 けど問題は……


「この少女は無実だ! 俺が断言しよう!」

「いや、君に断言されてもね」


 全くその通りだね。サイオスが何言っても私への疑いをやめるわけにはいかないだろう。そうこいつ……サイオスがいるから私は踏ん切りがつかない。だって私、こいつにバレたくないし。この超絶ヤバイアホにバレると絶対に面倒くさいことになる気しかしない。別に悪い奴ではないけど……やばいやつだからね。私が超絶可愛いからこういうやつも魅了してしまうのは仕方ない。けどまとわりつかれるのはヤダ。まとわりつくとか無理だろうけどさ……絶対に夢に出てきそうなんだもん。


「さあ、その帽子を取りなさい」

「…………」


 私が動けないでいるとサイオスが小声で言ってきた。


「任せろ。君は俺が守ってやる」

「あんた、私か追われてるの知ってるわよね? 犯罪者になるわよ」

「それでも、俺は助ける。俺は自分の行動を後悔したことなんてない。なぜなら、いつだって後悔しない行動を選んでるからだ。だから大船に乗った気でいろ」


 かっこいいことを言ってくれるサイオス。けど……その船、泥船に思えるのは私の心が汚れてるからだろうか? てかどうするつもりなの? さすがにギルドで暴れるのはヤバイ。ギルドにいる大量の冒険者まで参戦して暴れまわることになったら、サイオスは完全に冒険者資格の剥奪に牢屋いきは確定的。こいつの事はどうでもいいし、どこで野垂れ死んでくれてもかまわないけど、今は困る。だって私のせいみたいじゃん。


「ど、どうするつもりよ?」

「安心しろ。血は流さん。奴らを論破して君の無実を証明しよう。大丈夫だ。冒険者はまだ敵でも味方でもない。だが論破できれば、彼らはこちら側につく。そうなると、無理な同行を君に勧めることもできなくなるさ」


 なるほど……アホのくせに案外考えてる。けど私の不安は消えないよ。だって……だってだよ…………論破って出来るの!? そこが不安で仕方なかった。その一点だけで、この作戦崩壊してない? けどサイオスは私をかばう様に前に出てビシッと指をさして口を開いた。


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