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θ17

「なぜ君にそんなことがわかる!?」

「わかるわよ! だって私は――」


 そこで私の言葉が止まる。だってここで私の正体ばらすのはいかがなものかと。こいつは私の信者みたいなものだ。私の正体がわかれば平伏してくれそうではある。けど、ためらわれる。だってこいつやばいじゃん。やばいアホじゃん。今の言葉だってこいつは自分の言葉に全くの疑いを持ってない。その自信が怖い。もしもだよ……ほんとうにもしもこいつが私をラーゼだと認識したら……その時どんな行動に移るか……こいつの場合危ない行動を何の罪の意識なくやっちゃう可能性が無きにしも非ずだよ。


「だって?」

「うぅ……だって……だって、あんたきもいし!! めちゃくちゃきもいし!! 絶対そうに決まってるじゃん!!」


 もうやけくそにそんな事を言ってみた。すると冗談だとでもとらえたのか、「ははっはははは」とか笑いやがった。


「いやいや、あんだ自分がどんだけヤバイ奴か自覚ある? そもそもわた――ラーゼ様が待ってるとか妄想も甚だしいでしょ? 向こうはあんたの事すら知らないわよ!!」


 ここははっきり言ってやらないとヤバいもんね。助けてもらったけど、それはもうどっかいった。こいつの意識を変化させないとなんか私は今夜から眠れない気がする。だって鳥肌すごいもん。私の安眠の為にもこいつにはちゃんと自覚していただきたい。自分が英雄ではないということを。そして私はあんたなんかしらないということを。


「そもそも英雄ってカタヤさんでしょ? あんたじゃない」


 人種の英雄といえばカタヤなのは常識だ。フェアリー部隊は今も最前線で戦ってるわけだし、それを疑うやつはいない。


「今はそうかもしれない。だが、時代が俺をほっとかない。そして俺が真の英雄となったとき、ラーゼ様と初めて邂逅するんだ。そこで俺たちは運命を感じるだろう。間違いない」


 やべぇよこいつ。今の妄想が現実になるとしか思ってない目してる。私は両手で体を抑えて震えを抑える。だってだって自然と震えてきちゃうし。これが真の恐怖というやつか。


「はあ……あんた自分がどれだけヤバイか自覚ある?」

「俺は尋常じゃないくらいやばいぞ。そして同じくらいヤバいのはラーゼ様しかいない」

「あんたと一緒にするな!?」


 私は自身の名誉のために精一杯叫んだ。だってこいつと同列だけは許せない。なんか絶対にヤダ。初めてうけたよそんな侮辱! これまでの人生最大級の侮辱だよ。


「なぜ君が怒る?」

「それは……いや、だれだってあんたみたいにヤバイとか言われたら怒るでしょ?」


 一瞬あせったけど、よく考えたら普通に普通の事を言うだけでよかった。


「失敬な。君は俺の事を誤解してるようだ」

「誤解も何も、完全に理解してると思うけど……むしろ一点の曇りもなく認識が固まってるまである」


 やばいアホという一点で完全にこいつを理解してるといっても過言じゃないと思う。


「俺は君が思う以上にヤバイ!」

「マジなの!?」


 今以上にヤバイ奴だったの? さすがにそれは予想外。


「君を一人にするのは心配だ。そこはかとなくラーゼ様と同質の魅力を感じるからな。まああの人よりは輝きが薄いがな」

「そうですか……わたしはギルドにようがあるんだけど?」

「丁度いい。君は駆け出しだろう? 俺が先輩として君に同行しよう」

「いやいや、あんたみたいなヤバイ奴はちょっと……」


 こいつの認識はどうにかしたいけど、一緒にいるのは危険すぎる気がする。けどどうやらこのアホは人の話を聞かないみたいだ。


「なに遠慮するな!! 大丈夫、俺は下の奴にも優しい英雄だぞ」


 そう言って私をなんの躊躇なく抱きかかえた。お姫様だっこである。こいつデリカシーがなさすぎでしょ。私はそんな簡単に触れられる女じゃないのよ!? けど次の瞬間、めちゃ早く走り出してしがみつくしかなかった。この街のギルドに着いたら、衛兵がギルドで私を探してた。これは……まずいですね。


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