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「だからコランちゃんのあの一生懸命頑張ってる感じがいいんじゃないんか!」
「確かにコランちゃんもいい! それは認めるさ。けどやっぱり一番はシシちゃんだろ!? あの可愛さ! 最高だ!!」
「おいおい、確かにコランちゃんやシシちゃんは妹系としては最高の逸材だ。どっちも愛でたい。誰しもがそう思うだろう。だが! 俺は愛でられたい。お姉さんにフィリーお姉さんによしよしされたい!」
うんうん、熱い口論が繰り広げられてるね。みんな愛されていいことだ。ところで私は? 私はどうなの? こんな軒先でなに熱く性癖暴露してんだってことは置いといてだよ。私のことは何かないの? これだけ熱く語ってのなら、私のことも欠かせなくない? だってこの私を無視してプリムローズを語るとか……おこがましいでしょ? わたしあってのプリムローズ……私こそプリムローズだ! って意気込みだよ! 私は耳をピクピクさせながら聞き耳を立てる。
けど悲しいかな……彼らは自分たちの推しを熱く語るばかりで私の事は全然話題にも上がらない。まるで私はいないような……そんなさびしさがこみあげてくる。しかも他紙の美少女たちで盛り上がるとか……誰に許可得てるんだって話ですよ! 完全に逆切れだが、私は偉いのである。偉ければ、白さえも黒にできる。そう私ならね。
「ラーゼ……」
私は小さく自分の名前を呟く。けど当然、熱く語り合ってる彼らは気づかない。だから私はもう一度、しかし今度はもっとはっきりと声を出す。
「ラーゼ! こそ最高でしょ!」
「え? あの……」
当然の事ながら突然そんなことを言ってきた私にびっくりしてる皆さん。認識疎外もこうなると意味をなさない訳で、彼らは私を視界に入れた瞬間に顔が赤くなり、呂律が回らなくなった。混乱の頂点だと人はこんな顔になるんだって顔してるよ。そんな彼らに私はもう一度聞くよ。
「ラーゼはどうなのかしら?」
私はにこっと微笑んでそう問いかける。そしてしっかり三十秒ほどしてから彼らの言葉が聞き取れる位になった。
「ええええっとですね。らららららラーゼ様はなんというか恐れ多いといいますか……」
「そそそそそうなんですよ! ラーゼ様を自分たちが語るなんてそんな……」
「くく雲の上の人過ぎてというか……」
なるほど、まあ狙い通りではあるよね。私には届かないけど、ほか四人には手が届くかもって思わせるのも狙いだからね。けどここまであからさまに話に出てこないと私はむくれちゃうわけで……めんどうくさい女でごめんね。
「それじゃあ私には何もしたくない?」
そう上目遣いで行ってみると三人が泡を吹いて倒れた。どうやら私の可愛さに耐えられなかったようだ。ごめんねコラン、シシ、フィリー、三人のファンを奪ったかもしれない。三人が同時に後ろに倒れたことでちょっと注目を集め始めてる。とりあえず顔を隠しつつその場を離れよう……そう思ったら何やらでっかい奴がでっかい声でこう言った。
「同胞たちよ! 一体何が!? うぬが下手人か!!」
うん、もう何キャラだよって感じのいかつい奴がアイカード片手にんなこと言ってきた。




