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Σ96

「おい、亜子! 何やってる!? 早くカバー!」

「わ、分かってる!」


 光る銃弾が飛び交う中私は大きく口を開いてそう言うよ。火薬を使ってないと言ってもそれなりにデカイ音がやっぱり銃からはするわけで……大声でないと聞こえなかったりする。私は障害物から身体を出して手にした大きな銃を構える。いや、そこまで大きい訳じゃないんだけど、やっぱり女である私が持つと大きくなる。それに重いし……反動もなかなかつらい物がある。

 

 まあでも一番の問題は……気持ち……なんだけどね。純日本人な私としては銃を撃つって行為自体に抵抗がある。だって銃は人殺しの道具……ソレ以上でも以下でもない。だからこの頃の私はまだ銃を撃つこと事態ビクビクで……いつだって学校での成績は散々な物だった。

 

「い、行くよ!」


 とりあえず私は敵側の生徒達に向かって銃を放つ。けどそれは御世辞にも狙ってる訳じゃない。カバーだしとりあえず前線の味方を押し上げる為にも撃ちまくれば良いのだろう。だから私は撃ちまくる。

 

「てゃあああああああああ!!」


 とか言いながら。そして適当にやってたらこっちの味方は全滅してた。散々である。

 

「何をやっとるんだお前は!!」


 そうして今日も今日とて私は教官に怒られる次第です。この学園に入学して、怒られてない日があっただろうか? 嫌無い。ハッキリいって流石に落ち込んでくるよ。キララとかの普通の方なら……ここまで何も出来ないなんてなかったとおもうけど……こっちは身体動かす事がメインだし、勿論学業もやるけど、それも銃の知識だったり、戦術的なことだったりと縁もゆかりもない事の比重が大きい。おもったよりも大変でした。

 

 何回帰りたい……そう思ったことか。

 

「あの教官絶対お前に目をつけてるな」

「や……やめてよ」

「まあ実際、なんも出来てないしな」


 ぐっ、こっちはキララの方の貴族様ばかりじゃないから、案外フレンドリーな人達は居てくれたけど、でもここは人種の国の最高教育機関なわけで……平民と言っても皆優秀。そんな中、なんにも出来ない私はやっぱり肩身が狭い。皆優しいんだけどね。けどそれが自分には更に辛い訳で。

 

「ふん、そんなへっぴり腰で一体何を守るつもりですの? 私たちは民衆の盾、国の矛となるべくここに居るのですよ!」


 こういう事を言ってくれる人はある意味ありがたかった。私がダメダメだって素直に言ってくれるから。まあ相手は嫌味のつもりだろうけど。貴族の皆様は特殊な事情でここにいる私が気に入らなかったようだ。その中でも公爵家で国の軍事を司る貴族様のご令嬢から目をつけられてた。けど彼女は良きライバルだった。彼女はいつだって真剣で、貴族として国の事を守ろうと必死だった。

 

 だから彼女は私がアンティカのパイロットだともしってて、そんな私が不甲斐ない事を許せなかったんだ。彼女の事情とかも知るに連れ、私は自分を見つめ直して頑張った。そして少しずつ、皆の後に付いてけるようにはなった。けど――

 

「小清水亜子!!」

「はい! すいません!!」


 ――教官からの罵声は止まらなかったけどね。

 

 

 ふと意識が今に戻る。青空の下、目の前には巨大な化物。そして崩壊した街。動かない身体。

 

(今のは……走馬灯?)


 もうどうすることも出来ないことを、頭も身体もわかってる。皆は……無事だろうか? どの戦場に居るかなんてわからないけど、急に恋しくなった。

 

(辛かった日々の方が多いと思ったんだけどな)


 なのに走馬灯で見たのはあの日々の事。辛くても濃かった日々。案外私は……気に入ってたのかもしれない。けどそんな全てを守れないまま私は……私は……大きな化物が掲げた腕の先に黒い炎を集めていく。あんな大きな物をここではなったら……全てがなくなる。そんなこと……と思いつつも身体は動かない。

 

(みんな……ごめん!!)


 そう心で叫んで目を瞑る私。けどその時、耳のピアスから声が聞こえた。

 

『はあはあ……んぅ……だい……じょうぶ。交渉は成立よ』


 ラーゼの妙に色っぽい声が私にそんな事を伝えてくる。

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