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『冷たい……ですか?』

「うん、冷たいよ! たくさんの命がそこにはもうあるんだよ? それこそ数えきれないくらいだよ!」


 私は自分よりも多数の命を持ち出してみた。だって私個人よりも、多数っていうほうがなんか罪悪感が大きくならない? そう思ったんだ。けど……


『でもそれらも全てがその龍? のものだよね?』

「むぐ……」


 たしかにそれはそう。だって現宇宙を作ったのは始祖の龍だ。ならばそこではぐくまれた命は始祖の龍の物……というのは理にかなってるといえるだろう。確かにそうだね。でも違うよ! そうじゃない。


「たしかに私たちはなんでも生み出せるよ。けどその宇宙をはぐくんできたのはその生み出された人たちだよ? それなのにいきなり取り上げようとしてるんだよ? 確かにあの宇宙はすべてを始祖の龍が生み出したといえるけど、その宇宙を支えてきたのは、成長させたのはその宇宙に生まれた人々……命なんだよ? 彼らにだって感情があるの。

 そして彼らは納得なんてしてない」

『感情? その宇宙の人たちは食べられたくないと?』

「そうだよ! ね、かわいそうでしょ?」


 ようやく伝わったか……と私は思った。やっぱり蝶は超越してるから私の感覚を伝えるのが難しいよね。それにいろんな宇宙を観察してきたみたいだけど、本当に観察しかしてなくて、かかわってはなかったみたいだからね。たくさん生きてるみたいだけど、蝶は誰かに寄り添うってことができない。

 いや、これまでする必要なんてなかったんだろうけどね。でもこれで理解してくれただろう。確かに始祖の龍があの宇宙の所有権をもってる。でもだからって人権……いや人だけじゃないからここは生命権とでもいってようか? それはすべての命にあると思う。生命権とは命が生き続ける権利である。


『でも新たな場所できっと復活できるよ。だってまたその龍は作る。そしてそこでみんなが生き返る。そうでしょ?』

「それは……」


 なるほど、そうきたか。これが超越してる奴らの普通の思考なのかもしれない。私はそう思った。蝶はそれが普通の事で、それが当然の考えなんだ。なるほどね。始祖の龍とは交渉とかできない、考えだって理解できない……と思ってた。

 それは大体、あいつがただの野生だからって感じではあったけど……この蝶と会ってその考えに触れて私は思う。


(始祖たちとはそもそもの考えが根本から違いそうだ)


 ――てね。私は始祖になるまでにたくさんの命に触れた。たくさんの命の輝きってやつをみてきた。だからこそ、どんな命も輝きがあると知ってる。もちろん一番星は私だよ? でも、それぞれ別の輝きを命は放ってる。

 それを理解してるんだ。それを蝶も理解はきっとできてる。でも私とは死生観? が違う。きっと死を重要な事ってとらえてない。あとは積み上げたもの? 私は死は終わり――と思ってる。でも蝶は死はちょっとした回収? みたいな感じなんだと思う。


 始祖の龍が回収して、新たな宇宙で新たな生を始められるんだからいいじゃん――が蝶のいいぶん。そしてきっと始祖たちは普通にそんな風に思ってるんだろう。まあけど、きっと始祖ならそれが普通で当たり前かもしれない。

 だってゼロでも一でも……すべては私たちの思いのままなんだからね。命なんて私たち始祖にとっては、重要なものじゃない。私が、間違ってるのかな?

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