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Σ76

「なっ……づあ!?」


 身体が一気に重くなる。

 

(まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい!)


 これで終わりなんてそんな……けど身体がどんどんと重くなって云うこと効かなくなるよ。地面に向かってまっ逆さに落ちていく。これはゼウスよりも私がぺちゃんこになる方が速いかもしれない。軽々とマントさえ貫いて私まで届いたこの剣は凶悪過ぎる。指一本動かせないなんてそんな。オジサン鉄血種が真っ赤な月を背にしてこっちを見てる。見て……

 

「んくっ」


 ドクン! と身体が脈打った様に震えた。何? 赤かった月が次第に銀色に染まってく。そして暗かった視界が赤い色に見えてくる。

 

「あっが……ん」


 熱い熱い……身体が燃える様に熱いよ!! 私……どうなっちゃったの? 分からない……わからないけど……

 

「ぐがああああああああああ!!」


 自分が出した声だと思えない様な声が響く。そして引き抜かれた剣を使って鉄血種へと切り込んだ。二つの剣がかち合って甲高い音が真っ赤な空に響く。そして驚く事に私が握ってる方の剣が徐々に鉄血種の身体へと近づいてく。押してる? 私が? 人種の力で鉄血種を押し込めるなんてそんな……確かにアトラスあるけど……

 

「ふん!」


 鉄血種のオジサンは刃を切り替えして私を斬りつける。真っ赤な血が飛び散る――かと思ったけど、マントがその攻撃を防いでた。さっきはやけに簡単に貫かれたけど、今度はそうはなからなかったみたい。そしてマントも加わっての連撃を叩き込む。向こうも布があるが、それは布止まりだ。私の進化したマントには性能で勝ってない。

 

「あがっがっががあああああああ!!」


 言葉にならない声が私の口から漏れてる。ぶつかったマントと布は布の方がちぎれて行き、その性能差は更に顕著になっていく。どれか一つを防いでも、どこかからの攻撃で鉄血種はその身を削られてる。けど流石に無理やり使いまくってる鉄血種の物だった剣の切れ味が落ちてきてた。それがわかった。するとなんと私、自身にその剣を刺して血を吸わせやがった。

 

 そうするとあら不思議、なんと刀身が新品同様になった。

 

「既に理解したか」


 そう言った鉄血種は目の前から消えた。けどそれに反応してマントを後方に展開する。捕らえた感触が伝わってくる。簀巻になった鉄血種をその剣で串刺しにする。そして何度も何度も……けど次の瞬間、鉄血種のオジサンはその姿を変えて現れた。人種の様な見た目から離れる程にこいつらはその力を開放してる。真っ赤に飛び出した瞳。身体に浮き上がる黒い血管の様な模様。そして四肢は黒く硬質化してそれ自体が武器となる。

 

「往くぞ!!」


 そして再び私達はぶつかりあう。血が飛び散り、部位が剥がれても気にせずに二人共前に進んだ。戦って食らって貪って……そして胸を貫かれた鉄血種は塔の側面に磔になってた。私は塔の壁に爪を刺して張り付いてる。満身創痍の鉄血種。私はそれを見て満足気に笑い声を上げる。けどそれはそれはおぞましい声だった。そして鉄血種に近づき私は大きく口を開く。

 ゴキッと音がしたけど気にしない。こんなに開いた事があったっけ? っていうほどに開いてる気もする。

 

「そのまま落ちるか? 人でも我等でもない化け物に」


 ぼそっとそう言った鉄血種の声が耳に深く届いた。私は……そう……私は何? 今どうなってる? 今私は……何をしようとしてた? 私は……私は……鉄血種を食べようとしてた。それを理解した瞬間、私は声をあげようとした……けど言葉がでない。身体を見てみると私の腕は黒く硬質化してて、肌が露出してる部分には黒い血管が浮き出てて……これじゃあまるで……私は必死に口の動かし方を、喉の動きを思い出していく。そしてようやく……


「あっ……あぁあ……あああああああああああああああああああああああ!!」


 それだけを思い出して叫んだ。

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