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「お前に……お前にゼーファスが期待しての他はそういうことじゃないだろうが!」
そんな事を言ってる神がいた。彼はただの神ではない、その体は機械のように硬質で、目は大きくトンボのようで、首元にはスカーフをまいてた。腰にはくるくる回る格好いい(本人談)のベルトがあった。上位に位置してるその神はその特性……いや本質を変えることでどんな存在にも最適を出して勝ってきた神だ。
戦いの神なら……ともう一人を持って二大巨頭といえる一柱。それがその神だった。彼はすぐに始祖の龍のヤバさがわかってた。既に辺境と中位の神達の宇宙を食い尽くしている事実があって、そして最古で最強であった神のゼーファスだって既に負けている。ゼーファスの陣営はほぼ崩壊してるいっていい。
この宇宙にはもうほぼあとがない。そして自分たちの所まで来た始祖の龍を座して待つわけにもいかない。なにせ打って出ないと今まで食われた宇宙と同じ運命をたどることになる。それをただ受け入れる? そんな事は不可能だっだ。
なにせ神にだって責任はある。命を背負う責任だ。沢山の星を生み出し、その中で生きるすべての生命は神の子といえる。そんな者たちに対する責任。それをその神は果たすべく始祖の龍の前に立つ。
そして始祖の龍の前に立つと、その側に静かに侍ってるアーミュラに気付いた。彼もアーミュラの事はしってた。そしてゼーファスの計画の一部も聞いてたんだろう。だからこそ、すべての神を……いや、違う。
彼からみたアーミュラが裏切ったのは神……なんて括りでは追いつけないほどの物だ。
だってそれは……この宇宙の全て……なんだから。この宇宙の全ての神、全ての龍と竜たち、それにこの宇宙の全ての命……それらを差し出して自分だけは始祖の龍の庇護に落ち着いてる大罪人……そう見えてもおかしくないだろう。
だからこそ、きつい言葉がでた。怒りが湧いた。そんなのは許せなかった。始祖の龍もそうだが、ただ静かに見つめるアーミュラがより許せない。前はそんなやつではなかったことも知ってるというのもあるだろう。
前の、ただの神だったアーミュラはもっとおしゃべりだった。それが取り入るためだったとしても、言葉を重ねることが出来るやつだった。重ねて反応をみて、気を使える奴だったはずだ。それにいいやつだった。
なのに今のアーミュラがその神にはどう見えてるの。それは明らかだった。
「何だその目は? なんなんだその目はああああああ!!」
哀れみ……憐憫……そんな感情を確かにその神はアーミュラの瞳の奥に見てた。何をしても意味がないのが何故にわからないのか……という憐憫の目。まるで自分のやること全てが滑稽だとでも言わんばかりのその目にその神は激昂する。
力を高め、解放し、そのスカーフは長く大きく、背中には光の翼が輝き、更に全身は虹色に光る。腰のベルトは激しく回転してる。最終形態……それはオールフリーであり、全てを内包する形態だった。全てを内包するからこそ、全てに対して優位に立てる。
そんな形態だ。けど次の瞬間……
「なに?」
その神は一口で始祖の龍の口に収まった。そしてそれをアーミュラは静かに視線を逸らして目を伏せる。見たくないのか、それともただ興味がないのか……それはわからない。




