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奴らは狡猾だ。だからこそ、星の中で勝てたといえる。あいつらは元はそこまで強い種でもなかった。けど、その狡猾さと大胆さ、そして度胸をもって星の勝者となった。
それがアクトパラスとゼンマイだ。今回のアクトパラスの行動だってそうだ。自身のすべてを退化させてでも、始祖の龍へと取りついて、今もなおその場所にいる。本当ならそんなことはありえないのに……けどこのまま何もしない?
それか時間が足りないのか? 始祖の龍の中で何が起きてるのか……それが分かんないのがね。
「どうしよう……このままじゃ、何のためにちょっとだけ時間を稼いだのか……」
いや本当にちょっとだげどさ。数秒を数分くらいにした程度だけど……すでに私の現宇宙の力もほぼない。聖杯がなくなった今、私にはもう現宇宙の力を補充するすべもないからね。
『これは……なるほど……』
なにやらズラララバライトがそんな風にうなってる。どうしたのだろうか? でも「うぬぬ~」とうなるだけでこっちに何かを伝えてくることはない。それは私には関係ないって事か? でもなんかちらちらこっちを見てるんだよね。
「なに?」
だから抑えきれずに私から聞いた。
『うむ……これが意味があるのか……いや、これはただ崩壊を加速させるだけかもしれん』
なんだその歯切れの悪さは。何が言いたいのかはっきりと言ってほしい。
「なんなのよ。はっりき言いなさい」
『宇宙の形を変えられるか?』
「なにそれ?」
『もっと俯瞰してみたらわかる。向こうの宇宙をよく見てみるのだ』
なんかもったいぶるが、私はとりあえず現宇宙をみてみた。やっぱり戦闘の中心になってるところに視線を集めてしまうのはしょうがない。でも私は視線をずおおおおおーと引いて、広大な宇宙をみることにした。すると……
「なるほどね」
私は気付いた。これをズラララバライトは伝えたかったのね。確かにもとは向こうの古龍だったズラララバライトはこっちの存在になったとしても、どうにかして現宇宙がのこらないか? とは思ってるもんね。
だからこれのリスクを考えてたんだろう。
(宇宙の形の変容か……)
今はまだドラグのおかげで始祖の龍は宇宙を食うことを止めてる。けど、食いだしたら一瞬だ。迷ってる場合じゃない。宇宙を広げるときはただ単に「広がれー!」とおもってやった。
きっと中心から円状に広がってたと思う。だって何も意識しなかったし。けど意識したら……できないことはない気がする。
「よし!」
私は意識を集中した。とりあえず宇宙の端をグニグニと動かして感触を確かめる。きっとやれる! そう思った。




