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『来るぞ』
そんな風にルドルヴルヴの声が脳内に響く。するとその宣言通りにやつは……始祖の龍がやってきた。まだ点位にしか見えないが、やつの大きさ的にすぐにデカくなるだろう。そして……そしてやつならこんな辺境でも最小の宇宙なんてデザートにもなり得ないくらいだと思う。
それそこ一飲み……椀子そばの一杯くらいだろう。あれって何回も何回も注がれて食べるから満足感を得るのであって、一杯で「はい終了」――といわれたら「え?」となるのはうけあいだ。
つまりは始祖の龍にはこんな辺境の宇宙なんて満足できない……ということだ。だから……
(来なくて良かったのに……)
そう思う。もっと大きなメインディッシュが有るでしょうが!! 辺境は前菜にはちょうどいいかもしれない。でもその殆どをすべて食べつくしたんだからメインディッシュとかにいってよ。まあ順番的に次は中位の神達の領域になるとは思う。
上位の神の宇宙がメインディッシュなら、中位が前菜となるかもしれてい。ならばここ辺境で下位の神の宇宙は前菜にもなれないオードブル的な? そんな扱いだったのかもしれない。
てかそれならよりちょっとくらい食わなくてもいいでしょ。だって前菜からが料理じゃない? コースではないかな? メインディッシュの為にワクワクするのなら、ちょっとくらいのオードブルは残しても……ね。いいじゃん。そんなにこいつ「お残しは許しまへん!」的な精神を持ってるのか?
持ってないよね? そんな律儀なやつじゃないと思うし? でも来てしまったものは仕方ないよね。
「ちょっともう始祖の龍来ちゃったわよ?」
私は未だに聖杯に頭を突っ込んでジュワジュワしてるゼンマイにそう声をかける。だってそれをやってるだけで始祖の龍に対抗できそうななにか? が起きるわけもなく……ゼンマイには変化が起こってるけど……それをどうしたらいいのかこっちにはなぞだ。
「行くぞ。今なら……やつを食える」
「どういう事?」
私は大きな龍の形態で小首を傾げる。いや龍の形態だと小首なんて言えないけどね。太首? いやいや太首なんて可愛くない。だから却下である。それよりも今なら食えるって……随分な自信だねアクトパラス。
どういうことが説明してほしいよ。でも……アクトパラスは何かをいうことはなく、始祖の龍の方へとむかった。わたしたちは視線を交わして、とりあえずアクトパラスの後を追うことにした。




