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「これがあれば……」
そんな風にゼンマイは囁いてる。これがあれば何だ? もしかしたら始祖の龍を倒せる方法があるとでも? それならある意味で助かるけど……流石にそれはないだろう。
「それでどうするの?」
私はそうゼンマイに聞く。だってこいつらアクトパラスと共有して終わりにしそうじゃん。二人が仲いいのはいいよ。勝手にしとけって思う。けど、その聖杯元は私のだからな。そもそもが今もその聖杯が溢れさせてるのは私の力だ。
私の現宇宙のエネルギー。そのままで使える? でもだからってこれからゼンマイとアクトパラスに対応させるってのは不可能だ。できなくもないが、聖杯は一回自分の力で聖杯自身を満たさないとその循環を開始しないという制約がある。
けど、聖杯を満たすのは神でも大変だ。それこそ一瞬で……なんてできない。それなりの期間を二人も要したはずだ。だから今渡した聖杯を自分のエネルギーにする……なんて今はできないはずだ。
そんな時間がない。だってそれまで始祖の龍が待ってくれるわけもないし……そもそも再び聖杯が満ちる頃には現宇宙はきっと始祖の龍に食い尽くされてそうだ。
「その聖杯は私の力で満ちてるってわかってるよね?」
「そんなのは当然だ。だが、それは関係ない」
関係ないと言い切ったゼンマイ。ならばどうやら問題ないらしい。普通はそんな事ないが……いや一応私の元の神としての力はゼンマイとアクトパラスに分け与えられたものだから、親和性がまったくない……ということはない。
だからそこら辺が関係有るのかもしれない。まあ問題ないならいいけど……別に私的には今は聖杯を使う予定ないし? どんな風に使ったとしても、私的には文句はない。いやせいぜい華々しく使ってほしいかもしれない。それが聖杯への手向けだろう。
「大切なのは聖杯というシステム。その機能だ。アクトパラス」
「ああ、これだ」
そう言ってアクトパラスが何かをゼンマイに渡した。それは破片? 禍々しいその気配……それはもしかして……
「始祖の龍の破片?」
「ああ、これだけでも十分だ。」
そういってゼンマイはその始祖の龍の破片を胸に開けた部分に取り込んだ。するとその目玉が浮いてる試験管部分の液体がぶくぶくと気泡を下から上に上げだした。
苦しそうに「ぐううう」とも唸ってる。そんな中、ゼンマイのやつは聖杯にその頭を突っ込んだ。何やってるの? よくわかんないが、ふざけてる……わけじゃないんだろう。




