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&446

「いいんですか?」


 ドラグが私の顔の近くまできてそうささやいてくる。今の私は龍だ。だから人間サイズになってるドラグから見たら見上げるくらいに大きい。別にいつだって元に戻れるんだけど、アクトパラスとゼンマイがいる場所では元にもどれない。ドラグは察せる奴だから、私が龍のままでいるのにも何か理由があるってわかってるだろう。

 聖杯はドラグの中にある。だからドラグもこうやって確認してくる。確かに聖杯がなくなったらドラグ自身が弱体化したようなものである。なにせ直接ドラグは聖杯を取り込んでるから、まさに無尽蔵のエネルギーを持ってるといえる。最初はあふれるそのエネルギーによってドラグはブクブクと太っていってたけど、ある時からそんな事はなくなった。なんかスレンダーイケメンになってた。

 ドラグは元々竜らしいし、聖杯のエネルギーを使って龍へと至ってたかもしれない。それがなくなって、再び竜に逆戻りするのは嫌かもしれないが……まあここは我慢してもらおう。大丈夫、今やこの現宇宙のエネルギーは意味がそこまでない。だって現宇宙のエネルギーは結局の所、全ては始祖の龍が持っていくのだ。始祖の龍に通用しないのなら、いくら強大でも今は価値が低いと言わざる得ない。

 それだけ始祖の龍が目覚めたことでこの宇宙のパワーバランスが崩れたんだ。


「いいわ。こっちの力に未練なんてない。そうでしょ?」


 私はそういってやる。「わかりました」――その言葉と共に一瞬、ドラグの体が霞のように溶ける。そして次の瞬間にはその手に溢れんばかりのエネルギーが満ちた盃というには大きな杯がその手にあった。聖杯からは今もなお、黄金色のエネルギーが絶え間なくあふれてる。

 これのせいで辺境の宇宙とその神々が争いだしたんだよね。力……とは気にも恐ろしいと言わざる得ない。


「これぞまさに、完璧な聖杯」


 ゼンマイがなんかそんな事いってる。それに試験管の中に浮いてる無数の目が珍しく一点を見てるじゃないか。まるで恋にでも落ちたように聖杯を見つめるゼンマイ。そしてその震える手を聖杯に向けて、ドラグからその杯を受け取った。所で、完璧な聖杯ってなんだ?


(はて? 私が二人にやった聖杯も同じものだったはずだけど?)


 そうなのだ。別に私は二人に劣化品を渡してた……とかそんな卑怯な事はしてない。全く同じものをアクトパラスとゼンマイには渡してたはずだ。だからゼンマイがいったドラグがとりだした聖杯に向けた「完璧な聖杯」という言葉がわからない。もしかしていちゃもんつける気か? 

 自分たちの聖杯は劣化品だったって。それを言われてもこっちには同じものだったという証明はできないぞ。もう現物もなくなってるだろうしさ……くっ、こいつ等卑怯者!!


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