&437
「ふむふむ」
私は少しずつ仕込んでる。いくらかはじけ飛ぶ魔法陣の中にもっと別の……そう、別の陣を紛れ込ませてる。それは攻撃を全く想定してない陣だ。少しずつ、私の力を始祖の龍へと流し込んでる。私の力と始祖の龍の力は全く違う。だからこそ、私の力を中に取り込むと始祖の龍はそれを異物――と判断して吐き出してた。
それがどれだけの濃度とか量だったらそうなるのかわからない。だから一応対策はしてる。だって吐き出したら、あいつの中に私の力が入ってるということが一発でばれてしまう。それを深く考えない奴ならいいけど、始祖の龍の事はよくわからない……が正直なところだ。
だからなるべく気づかれないようにした方がいい。その為に私はその陣に内包してる私の力を自身の現宇宙の力で包んでる。そうなると、そこまで大きな力を始祖の龍へと流す……なんて事は出来ない。気づいたら実は内部がズタボロになってて――
「チェックメイトよ」
――とか格好よく言いたいけど、それは無理だ。そんな風に格好よく勝てる相手じゃないのだ。だからもっと泥臭くやるしかない。私の主義には反するけどね。でも勝つことが大切だから仕方ない。一番の私の主義は勝利を掴むことだ。最終的に勝つために戦わないといけない。戦うならね。本当なら戦わないでいいのなら私は戦いなんてしたくない。だって痛いし辛いし? メリットってそんなに多くないしね。
そもそも私は神になった時点で満足だった。私のこの美貌を保ちつつ永遠を生きられるわけだし、私を崇拝してくれる奴らだって生み出せた。自分の宇宙に引きこもり、いくつかの生命体がいる星を生み出しつつ悠々自適に神生を謳歌する……それでよかった。なのになんでこんなことになってるのか……私がこうやって始祖の龍との戦いで最前線を張るとかさ……この現宇宙の神達は泣いて感謝しろって思う。
私の新生宇宙の力を現宇宙の力で包んで陣に触れる度に私は始祖の龍の中へと自分の力を混ぜてる。そしてその力には色々と仕込んであるのだ。まずは始祖の龍を知るための解析。そしてこれが大切だけど、どれだけ始祖の龍をだませるか……その兆候を私はみたい。始祖の龍のどの部分ならだまくらかせるか……あんまり強い力を流し込むことはできないから、だますといっても大層な事はできない。
精々ちょっと幻覚を一瞬見せるとか、物忘れさせるとか? その程度だろう。でも一瞬の隙さえあれば、アーミュラを新生宇宙に連れ去ることが出来る。だから私は始祖の龍の内部をしって、効率的にだまくらかせる器官を見つけたいのだ。