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始祖の龍の一声。それはただの宣言じゃなかった。なにせ相手は始祖の龍だ。そのすべてに『力』がある。そして現宇宙の存在はそんな始祖の龍に逆らうことは基本的にできない。極端なことをいえば始祖の龍が『死ね』とだけ告げれば、現宇宙の存在は死ぬ……そのくらいの力が始祖の龍にはある。だからこそこうやって戦ってること自体が始祖の龍にとっては遊び……といえる。
いや、始祖の龍的には趣味なのかもしれない。なにせあいつ戦い好きそうだし? 破壊したいから、立ち向かってきてくれたほうがいいのかも。ただなんの抵抗もない相手を破壊するよりも、一生懸命に抵抗する相手を破壊したほうが始祖の龍的には楽しいのだろう。ならば今の一声に「死ね」――という意味が込められてたのか? というとそんなことはなかった。まあいくら戦いがすきだからといっても雑魚では戦った気がしないというのは私にもわかる。象と蟻では戦いにならないじゃん? でもそういう雑魚がわらわらといても厄介というか? 面倒? なだけ。だからそんな時には始祖の龍も命令をだすのかも。
実際アクトパラスとゼンマイはそんなただ雑魚で厄介なだけの存在なはずだ。だから今の一声で二人は……
「なに……」
「これ……は……」
二人の体は崩壊してた。死までは込めなかったけど、面倒だからたった一言で破壊することにしたみたいだ。それは私やルドルヴルヴ、ヴァラヴァレレイドも聞いてた。ならば私たちにだって適用されておかしくない。まあ私はこの宇宙の存在じゃないし、始祖だからね。現宇宙の始祖であるこの始祖の龍の言葉に従うなんて深層心理はない。
だから私に効かないのは当然だ。けどヴァラヴァレレイドもルドルヴルヴもこの現宇宙の存在である。ならば始祖の龍の言葉は影響があるはず。そうだろう。けど二人は無事だ。やっぱりそこは辺境の神と龍の違いなんだろう。
ある程度の抵抗力? ってのを龍は持ってるのかも。まあ私が二人を力で守ってる……というのもでかいだろう。気づいたけど、そういえばアクトパラスとゼンマイは守ってなかったや。その意識すらなかった。ごめんね。けど実際、二人の力では『死』はさけられなかった。だからある意味で『崩壊』だけで済んでるのはましだ。せめて……この現宇宙を始祖の龍が破壊しつくすまでは命をつなげれたんだからね。
始祖の龍がその気になれば、死を与えて自身の血肉にすることができた。そうなるとアクトパラスとゼンマイはもう個人……として世界に現れることはなかった。だって魂までも始祖の龍が食うんだ。そうなったら復活の目はない。本当の死が訪れることになる。でも、アクトパラスとゼンマイは破壊されても死をもたらせることはなかった。きっとそれだけ弱いと思われたからだろう。
この二人よりもおいしそうな存在が三体もいる。ならばこんな雑魚にかまってる暇なんて始祖の龍にはなかった。デザートにも、いや前菜にも二人はなりえなかったのだ。
「くくくく、これが! これが始祖の力かああああああああああああ!!」
ええ、こわ……なんかアクトパラスが興奮しつつ突っ込んでいく。崩壊しつつ、それでもアクトパラスの奴は始祖の龍と戦う気みたいだ。なんだあいつ? さすがに引くよ。