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『あっあっ……アーブううううううううううううう!!』
そんな声にハッとする。新生宇宙の方でズラララバライトと会話してたから、現宇宙の方に視線を戻す。すると……うん、その絶叫の原因がわかった。それは双子竜の赤い方、アーブとか呼ばれた古龍が始祖の龍の手にかかってた。手というか? 口? 赤い双子竜の体が始祖の龍によって食われてる。
全身……ではない。けど、それはどう見ても致命傷。でも、古龍なら、龍ならばその余りある生命力でまだなんとかなるかもしれない。けど……
バシュ――グチャ――バシュ――
そんな風に宇宙に嫌な音が響く。それはきっとアーブの肉が……鱗が砕かれたり咀嚼された音なんだろう。始祖の龍が食ったのは最初の一回だけ……だったはず。食い逃げ……というとなんか浅いが、一回で古龍の命さえを刈り取れそうな程だった。
でもそれでもまだアーブは生きてたはず。それに始祖の龍は離れてた。なのに……そのあともまるで食べられるようにアーブはその肉体を欠損していって、そして消えていく。
どうやら始祖の龍は別にその口の中に獲物を入れる……必要はないらしい。なぜにいなくなったアーブが始祖の龍に食われたとわかるのか? だって始祖の龍の口から古龍の緑色の血が溢れてるのだ。流れ出てる。
そしてその瞳は残りの古龍たちを見てる。これはまずいぞ……始祖の龍は今までの遊び……戯れといってもいいそれをやめたみたいだ。その最初の犠牲者がアーブだった。それだけ。
『こ、こいつ!! よくもアーブをおおおおおおおおおお!!』
それはフラグだよビーブ君!! 激昂して勝てる相手じゃない。
「ヴァラヴァレレイド止めて!!」
このまま古龍が無駄に死ぬなんて許してはいけない。確かにアーブの事は残念だ。双子龍であるビーブはそれこそ半身を引き裂かれたような……そんな心情だというのもわかる。けど……このまま突貫したって無駄死にだよ。アーブの仇をとりたいのなら、冷静になるのが大切だ。
でも今のビーブにそんな言葉が届くわけもない。だからヴァラヴァレレイドに実力行使にでてもらう。ビーブは古龍でヴァラヴァレレイドは龍である。龍の中でもヴァラヴァレレイドは上位の龍だ。でも、古龍には勝てない。けど私は始祖だ。始祖の力を乗っけたら、ヴァラヴァレレイドでもビーブを止め……
次の瞬間膨らんだ始祖の龍の力が弾けた。紫の光が宇宙を走る。なんとかヴァラヴァレレイドは守った。けど……




