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結局の所、私達はアーミュラと会話とかできなかった。だって比較的すぐに始祖の龍が戻ってきたからだ。とんでも力を乗せたブレスが宇宙に突如現れていくつもの星を巻き込んで彼方へと走る。
きっと不幸な神とか竜とか巻き込まれて消えたりするんだろうなって感じの超絶な威力のブレス。まあけど、そんな哀れな神やら竜にかまってる暇はない。ブレスが発生したところには穴が穴いてる。宇宙に開いた穴。そこから始祖の龍が顔を出して、グリグリと顔を回して穴を押し広げる。
そして空間が割れていき、無から始祖の龍がでてきた。
『早いな。だが、うまくはやったようだな」
ルドルヴルヴがそんな事を呟く。きっとうまくやった――というのはあの白い古龍の事を言ってるんだろう。やっぱり始祖の龍の体に入るのは予定通りらしい。でも……どうやって戻ってくるん? それができるのか? わからないんですけど。
そんな事を思ってると、始祖の龍がまっすぐに進む。それはもちろんだけど、アーミュラのところへと……だ。アーミュラを守るように始祖の龍はその体を使って割って入る。双子龍の攻撃なんてきにしてなんかなかった。
始祖の龍があれだけ執着するとは……やっぱりパートナーというのは特別みたいだ。だって始祖の龍は破壊の化身……みたいなさ? そんなのじゃん。全てを破壊してるのに、そこに愛着とかあるなんておもえなかった。
私は新生宇宙にそれなりに愛着がある。自分が作り出してるからだ。そしてこの現宇宙は始祖の龍が造ったはずだ。でも、こいつはためらいなんてなく、この現宇宙を食う気の筈。
そんなやつだから何にも愛着とかないんじゃないか? と思うのは普通だろう。けどそれは違ったらしい。始祖の龍は攻撃なんて目もくれず、双子竜とアーミュラの間に入って
いった。
そしてアーミュラを確保する。それに対してアーミュラも体を寄り添うようにする。それは本心の行動なのか? 私にはわからない。けど、少なくともこの行動でもアーミュラが始祖の龍の弱点になり得るのは考えられる。
アーミュラが始祖の龍から離れないのなら、始祖の龍がアーミュラを特別だと認識してるのなら、そこには付け入る隙がある。生まれる。今まで始祖の龍には弱点なんて一切なかった。
なにせ始祖で、奴は野生の獣のような存在だった。ただ全てを壊す……そんな本能のままに動く存在。そんなやつには懇願も祈りも意味なんてなかった。付け入る隙が一切なかった。
でも……今明確に始祖の龍はアーミュラを特別に扱ってる。それがなんでか? なのはよくわかんない。でも……始祖の龍を崩すきっかけ……それは確実にアーミュラで間違いない。




