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「あいつアホなの」
私は死に行くアクトパラスを見て思わずそういった。だって……ね。なんであんなことをやったのか理解不能。勝てないなんてわかってたでしょう。だって相手は始祖の龍だよ? 確かにアクトパラスは戦闘ジャンキーだった。
でも勝てる勝てないくらいはわかるでしょう。なにせ始祖の龍は圧倒的だ。いくらなんでも今のは自殺行為。でも……おかしなことが起きる。
「うははははははは! 得たぞ! 始祖の龍!!」
魂に肉がついて、ブクブクと膨張していく。そんなバカな……だ。あいつ始祖の龍にやられたんだよ? 始祖の龍にやられたら全てが食いつくされるはずだ。神も龍もそこに差異はなく、始祖の龍の前では赤子も同然だ。そして始祖の龍がその気になればすべてを簡単に飲み込むことができるだろう。
それは皮だけじゃない魂だってそうだ。そして輪廻を終わらせて、この宇宙を完全に無に帰すことだってできる。だから個を無に帰すなんて始祖の龍にとっては簡単だ。私だって私の新生宇宙では誰にも負ける気にならないからね。生み出したものを指一本いや、指一本も必要ない。
ただ一つ――【消えろ】――と思うだけでいい。それが始祖……始祖の力だ。それだけ圧倒的な力があるのが始祖。それだけ始祖は絶対だ。だからこそ今、戦ってるのは始祖の龍にとっては遊び以外の何物でもない。
遊び……とはいっても簡単に神にも龍にも死を与えられるのはかわらない。だからこそ、アクトパラスは死んだはずだった。でも……あいつは復活してる。いや復活しようとしてる。魂さえも砕かれた筈。なのにそこから復活? 普通はそんな事はできない。だって魂だよ? 神にとっての根源が壊されたのにそこから復活? 普通は魂を壊されたら死ぬ。今の一撃でも、アクトパラス以外の沢山の神が死んだ。まあ大体辺境の神だけど……ゼーファス陣営は色々とどうにかできる術、対抗策を施してるらしい。
長年始祖の龍と戦う事を想定してただけはある。でも……それも何回もできることはないみたい。確実に神の数は減ってる。その中で確実な死から復活しようとしてるアクトパラス。それは確実な異質。だからこそ、周囲の神達も驚愕してるだろう。
ブクブクと細胞が増殖するかの様に奇形のままに大きく成り続けるアクトパラス。そしてそのブクブクからいくつもの触手が出てきて始祖の龍をからめとった。




