&366
『何をしている! 貴様たちは始祖を打ち倒してこの宇宙を永久のものにしたいのではないのか!? 始祖がいる限り、この世界は滅亡と隣り合わせだぞ!!』
強力な覇気と共に我はその場の神達を恫喝する。こいつらは始祖を倒すために集まってる筈だ。それなのにこれはなんだ? こんなのでは始祖にただただ蹂躙されるだけで、なんの役にも立たないぞ。せめて少しでも時間を……それかまともに戦って、我が女神の為に情報を引き出してくれないと困る。こいつらが死ぬのは構わないが、ただ無意味に死ぬのは許さぬ。
そうなると、魂を我が食らってやろう。二度と神として成り立たなくしてやる。
『ゼーファスよどうした? 神の頂点の貴様が怖気づいたのか?』
「儂は……」
ゼーファスは下を見て震えてる。こいつは老齢の見た目をしてるが、本来はこんなのではなかったはずだ。その見た目に反して、煌々とした力が光ってた筈だ。それなのに……
『ゼーファスよ。貴様が諦めたら、この宇宙は終わりだぞ。既に古龍様方もバラバラだ。他の神ではだめだ。貴様でないと、散った古龍様方を集めること出来ない。そうであろう?』
古龍様たちは全て死したわけじゃない。むしろ死んだ方が少ない。もう封印の意味がないと、役割を放棄してしまっただけだ。きっとどこかで始祖の龍の事を見てるだろう。一人一人では絶対に古龍様たちは勝てないとわかってる。だからこそ、隠れてる。だからこそ、誰かが戦いの火ぶたを切らないといけない。我が切ったと思うかもしれないが、龍では変数になりはしないだろう。
そもそも龍やら竜ならば、古龍様たちが命令をすればいいだけだ。『神』――が動くことが必要だ。そしてそれの先頭に立つのは……最古の神の貴様しかない。ずっと始祖の龍を倒すために動いてきたゼーファスだ。
こいつが動かないと、大半の神だって動かないだろう。宇宙の危機なんだ。このままだと始祖の龍にただただこの宇宙が食いつくされるだけ。それはよくわかってるだろう。それなのに、このまま震えてる気か? 正気か?
『始祖と相対したか?』
ここまでゼーファスが逃げ腰になってるというのはそれしか考えられない。実際あの始祖の龍を間近にしたら、怖気づくのもわかるからだ。根源たる恐怖。そしてどうしようもない畏怖が襲ってくる。この宇宙の存在では絶対に勝てないと思える上位種……それが本能でわかってしまうからだ。
けどそれであきらめた終わりだろう。それでも……歯を食いしばって戦える奴だと思ってたんだがな。違ったのか? ゼーファスはそんな弱い神だったか? いや違う。少なくとも我が知ってるゼーファスはただの老神ではない。




