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ヴァラヴァレレイドの分身たちはとても優秀だった。いやヴァラヴァレレイドが優秀だったのか。
「よくあんなものを即席で……」
私はそんな風に呟く。ヴァラヴァレレイドをむしばむ始祖の龍の呪い。それを解くために頑張ってるが、戦況はちゃんと把握してないとでしょう? だからちゃんと観てるのだ。
『奴も案外器用だからの』
「そうみたいね」
ヴァラヴァレレイドは私にとても心酔してるから、そこまで戦闘とかその実力とかよくわかんないけど、結構すぐに信用したんだよね。だって私からヴァラヴァレレイドというよりも、ヴァラヴァレレイドから私への気持ちがとても大きいからね。
愛を持ってしまった奴は、その愛を向けた相手を裏切ることは出来ないのだ。なのでまあ信頼してもいいのかなって? だってヴァラヴァレレイドは私にぞっこんだらかね。疑う必要がないのだ。
こうやって私の為に始祖の龍とも戦ってくれてる。他の龍やら上位の神達が諦観してる中、こうやって前に出てくるだけで危険なのに、自身の身を顧みない行動……愛は証明されてる……と言っていいだろう。
だからこそ、その行動に私も応えないといけない。
上手くヴァラヴァレレイドの分身は始祖の龍の気を引くことに成功してる。なにせ楽しく倒せる分身をヴァラヴァレレイドは作ってるようだからだ。確かにヴァラヴァレレイドの分身は高性能だけど、そこには始祖の龍に倒させる……という前提がある。
ロジック……いや、作り出すの時の命令形? それらが最初はどうやら回避に全力を出してるみたい。そしてそのあとは、突貫か。沢山出すからわかりにくいし、最初によけるから、上手くできてる分身だなっておもったけど、とうやら私が思ってたよりもあの分身はもっと単純なのかもしれない。
ヴァラヴァレレイドはきっと分身に始祖の龍の興味が行くようにとしてる。まずは攻撃をよけさせることで始祖の龍の興味を引き、それから突っ込ませることで正面から戦いを挑むような構図を作り出す。
それによって、戦い大好きであろう始祖の龍の関心を分身たちに向けてるって訳だろう。これが少しでも考える事をする奴なら、これが陽動だと気づくだろう。時間稼ぎ……とも思うかもしれない。
でも始祖の龍のそんなの考えない。そんなの考える必要がないからだ。いくら精巧な分身を作り出そうとも、その力が龍とそん色なくとも、いくつもの分身が始祖の龍へと向かおうとも……それら全てを……始祖の龍は蹂躙できるんだから。




