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「この行動で、アーミュラがまだまともなのか、わかるかもね」
私はのぞき見しながら、そんなことを呟く。だって以前のアーミュラではなかったら、人質にされてる星も眷属も、そして竜達も関係なく、さっさと、自分の宇宙を蹂躙した神達をぶっ殺しそうじゃん。
けと交渉とかするのなら、ちゃんとした理性が残ってて、以前のアーミュラと同じ……と思える。さて、どうするのか……何体もの神が星から出てくる。その形は様々だ。人型もいるけど、そうじゃないのもおおい。オオカミの様な奴とか、熊の様なやつとか、鳥類みたいなのもいる。
そんな奴らがたくさん出て来た。あれかな? 皆一緒ならどうにかなる……みたいな? その気持ちなのかもしれない。やっぱり神でも集団になると、強気になれるみたいだ。相手は始祖の龍だよ? まあ伝説も伝説みたいなものだからね。その力の強大さは感じれると思うけど、それでも数がいるから、どうにかなると思ってるのかもしれない。それに彼らには人質もあるしね。
「わかるか? ここはもう我らの宇宙。我らの星。貴様の眷属たちと残りはここにしかない。それも我らの手の上にある。大人しくしろ。そして、我らと共にこい。始祖の龍がいれば、この宇宙の全てを取れる!」
一人の神がそういって手を握った。周囲の神達も、それに賛同してテンションが高い。確かに始祖の龍が彼らに付けば、それも可能だろう。だって彼らはせいぜいが中位……いや、それにも届いてない、神達だ。宇宙を獲るなんて……普段はきっと考えもできないような……そんな弱小な神のようだ。
それでも神なんだからそれで納得してれば……ね。よかったのに。分不相応な夢を彼等は見てしまったらしい。
「言いたいことはそれだけですか?」
初めて言葉を発したアーミュラ。どうやら言葉を発する思考はちゃんとあるらしい。でもまだ油断はできない。あれが本当に私が知ってるアーミュラなのか……それを確かめないとね。
「大丈夫。ちゃんと君たちも高待遇で迎えよう。宇宙の全てを獲れたら、半分をやろう!」
どっかの大魔王みたいな……そんなことを神がいってる。そんな彼らにアーミュラは歩きながら近づいてく。
「そうですか。それはそれは、お心遣い、痛み入ります」
楚々と歩くその姿は美しい。けど、その表情は、恐ろしいくらいに無表情だ。私の知ってるアーミュラは神にしてはとても表情豊かな奴……って印象だったけど。あれはきっと怒ってる顔だと思うんだよね。それもブチギレの顔……更にこんなことをやらかした奴らに対してのやけに丁寧な言葉遣い。
逆に恐ろしい。静かに起こるのはアーミュラらしいから、あれはやっぱり私の知ってるアーミュラかもしれない。
「では!」
「ええ……」
「歓迎しよう我らが新たな宇宙の秩序を創ろうではない――か?」
神の言葉が止まる。それもそうだろう。歩きつつ、アーミュラは大きな鎌を取り出した。そしてそれを一振り遠くからした瞬間、この宇宙が様変わりしたんだ。
「んにゃああああああああああ!?」
私は新生宇宙で目を抑えて転げまわってるよ。




