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(まずい!?)
儂は二人の移動の気配を感じ取ってより潜伏に気を配る。見つかるわけにはいかぬ。アーミュラ神の事は気になるし、その本心を確かめたいが、始祖の龍が傍にいるとそれもできない。きちんとこちらの予定通りに、始祖の龍のパートナーになってくれてたら、こんな心配は不要じゃっただろう。
じゃが、ホワイトホールと共に消滅したと思ってたのにちゃんと始祖の龍のパートナーとしてアーミュラ神はいた。これを予定通りといえるのか……流石に無理じゃなかろうか? 本当にあのアーミュラ神が儂が知ってるアーミュラ神とも限らないからの。
もしも……アーミュラ神が完璧に始祖の龍へとついてるのなら、大変だ。アーミュラ神は始祖の龍の枷とならず、寧ろ始祖の龍へと色々と吹き込んだりするやもしれぬ。我らの計画とかまでも……不安が広がるの。
ここまで不安を抱いたのは一体いつ以来じゃろうか? もうずっとこんな気持ちはなかなかなかったじゃろう。なにせ儂は一番古い神として、堅実にやってきた。威張ることもせずに、他の者の育成に力を込めて、宇宙の成長を見守ってきた。
儂が表で戦いあったのなど、もう一体いつなのかさえ思い出せない。それくらい、長い時を儂は上手くやってきたのだ。だが、今その全てが崩れるかもしれぬ。
「はぁっはぁっはぁっ……ゴク」
儂は別異相で壁に張り付くように息を殺した。見つからないでおくれ……と願い、懇願してた。なんとか発見されることはなかった。始祖の龍とアーミュラ神は遠くへといった。あの方向はどこか……始祖の龍が行った後もしばらくはそんなことさえ考える事出は出来なかった。
そして気づいた。
「儂は……情けないの……」
さっきの態度。自分で思い返して恥ずかしくなる。よしんば、気づかれてないのなら、不意打ちでも……とか一切思う事もなかった。ただただ、ばれないように……と願うしかなかった。
「正しい……判断じゃった」
言い訳をするなら、それしかない。正しい判断。だって一人で始祖の龍に挑むなんて勇気でもなんでもない。ただの自殺だ。それに儂はもっとも上の神。儂は勝手に死んでいい立場ではないのだ。だから、今の判断はただしかった。
そう自分を納得させるしかない。無様に隠れてただけ……気づかれたとしても、きっと儂は戦わずに命乞いをしてたかもしれぬ。でもそんな状況にはなってない。それに誰にも見られてる訳もない。まだ……儂の弱虫な部分を知ってる奴はおらぬのだ。
こんな儂を頼ってる神が沢山とは……この宇宙は気の毒かもしれぬの。そんな風に帰路をたどりつつ思った。




