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私は拳を握った。そしてラーゼが映ってる窓に向かってその拳を叩きつけてやる。パリーン!! ――と一面のガラスがそれによって割れる……なんてことにはもちろんならない。
てかそんなことになったら大変だ。私はか弱い女性なのだから、そんな一撃でこんなどでかい窓を割るなんてできるわけない。まあ気持ち的にはそこまでやることなかったけどね。本気で窓を叩いたわけじゃない。鳴った音もドカンとなるわけなくて、せいぜいコツンである。
でも……怒ってるのは本当だよ。本当は本気で殴りたかった。だって今の発言。ラーゼの今の発言は助けられたのに助けなかったって……そういう風に聞こえた。それを言われたらさ……あのときに死んで行った人たち……助けられなかった人たちの顔が浮かんでしまったのだ。
実際もう、あのときの事……それは夢のようだったと思ってるが、実際夢じゃないんだ。だから今のラーゼの発言で記憶が浮かび上がってきた。
「怒った?」
「怒るよ。みんながどんな思いだったか……あんたにはわからないの? 神になってそんな心もなくしてしまったの?」
私は窓の向こうに写ってるラーゼにそういった。こいつは確かに他人を利用することに長けてるやつではあった。てかそうやってのし上がってきた奴といっておかしくない。女を武器にしてたやつだ。
でもそんなやつでも、優しさはあったはずだけど……でも神になる過程で色々とあったのかもしれない。まあ神になってもそんなに変わってない……とか思ってたんだけど、それは私の思い違いだったかもしれない。
だって全人類をあんな目に合わせたんだから。こいつから優しさがなくなったとも思ってもおかしくないよね?
「ふふ、言ったでしょ仕方なかったって。前の宇宙の因果とか、輪廻からあの星の魂を切り離すには【死】が必要だったんだからさ」
何やらラーゼが難しいことを言ってる。あのラーゼが? 確かにさっきから必要とか言ってるけど……もっと噛み砕いてくれないと……私にはそこら辺よくわかんないよ。
「前の宇宙って何? 今ここはじゃあ何なの?」
「ここは私の宇宙。全く新しい新生宇宙だよ。宇宙が全く違うのよ。前の地球があった宇宙は現宇宙とか呼んでる。そこは今大変な宇宙ね。でもここは私が一から作った宇宙だから、その問題はないの。
そんな宇宙に連れてきてやったんだから感謝しなさい」
新生宇宙に現宇宙とか……宇宙と宇宙の違いとか私にはわからない。でもきっとこっちにとってはいいことをしてくれた? ってことでいいのかな




