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「はっ!?」


 私は目の前の光景に目を奪われる。そこには沢山の人々がいて、私に向かって熱狂してる。ペンライトをもって、それを振ったり、口の両端に手を置いてその声を届けようとしてたり……その人たちは様々だ。でも一つだけ共通してる事が言えるだろう。それは皆楽しそう……という事だ。背後の空中モニターに演出の為の映像が流れてたりしてる中、そこで私の……15周年ライブだという事も流れてた。私のドアップの顔の横にそういう風な凝ったロゴのテーマが流れてた。

 つまりは……私は今ライブ中なのだ。てかよく聞いたら、音楽が流れてる。


(えーと……)


 頭は混乱してる。間違いない。もしかしたらさっきまでの地球滅亡は夢だったんじゃないか? とすら思える。曲と曲の合間の間奏が終わりそうだと、私はわかった。混乱してるが、これまでの経験……そして今日までの努力が私の体を勝手に動かす。なるべくなんの違和感もないように、思いっきり声をだす。さらに盛り上がる観客たち。それからも何曲も歌ったり、ゲストを招いたりしつつ、一回舞台裏に引くタイミングがきた。

 水を飲み、衣装を待ち構えてたスタッフたちが着替えさせてくれて、さらには同時進行で立ちながらもメイクの人が今直せる部分のメイクを直していく。そんな時だった。


「ママ!」

「お母さん!」


 二人の子供たちがやってきた。こらこら、舞台裏には来ちゃいけないっていつも言ってるでしょうに。一体どうしたというのか? とりあえず叱るよりもどうしたのか聞くのが大切でしょう。耳を傾ける……それが大事だと私は子育では思ってる。


「どうしたの?」


 私はメイクや衣装をされながら、ちらっとだけ二人を見てそういった。すると二人はなんだか視線を合わせたり、離したりしてる。どっちが言うか迷ってる? するとお兄ちゃんの方が口を開いた。


「あのさ、お母さん大丈夫?」

「どうしてそう思ったの?」

「いや、なんとなくだけど、一回曲の間で放心してた? っていうか? なんか違和感あったから」


 それを聞いて、私は驚いた。まさかあのちょっとの変化を気づかれてたとは。やっぱり血を分けた家族だ。きっと夫も気づいてるだろう。でもあの人の事だ。私の事を信じてるんだろう。だからここにはこない。私は二人に心配させないように、笑顔をつくる。


「大丈夫よ。どこも何も問題ない。むしろ絶好調なのよ。生まれ変わったみたい」


 今の言葉、自分で言って何かストンときた。そう、これは嘘は一切ない。本当に絶好調だ。流石に十代の時よりも体力が落ちてきた……とか思ってたけど、それも感じない。まだまだ全力で走っていけそうなほどだ。まるでさっきまでの自分じゃないような……そんな気さえしてた。


「本当ママ?」

「ええ、だから最上亜子最高のライブを見せてあげる」


 私はそう言って二人を送り出す。そして再びステージに元った。この日のステージはまさに私至上最上のライブだっただろう。

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