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&327

 世界が泣いてる。いきなり現れた奇異な姿の生物。そして空から降りそそぐ炎の弾。それは地上に落ちると地上の全てを吹き飛ばす。隕石のような物なのかもしれない。

 けど実は隕石は一年で結構な数が落ちてるという。でも……ここまで真っ赤で大きな隕石が落ちることはまれだろう。あれだけの大きさなら、きっと衛星とかが事前に観測してておかしないが、そんな発表は一切なかった。

 それに隕石が実際に地上に……それも人が住んでる圏内におちるなんてのはそうそうない。でも……そんなのがアホらしくなるくらいにその火の玉は多かった。それに火の玉だけじゃなく沢山の大きな化け物だっている。


 混乱に陥った世界。誰もが「もう終わりだ」――とおもっただろう。けどそんな時、どこかからか音楽が流れてくる。本当ならそんな音楽に耳を傾けてる暇だってないだろう。今この瞬間にも炎が落ちて、大地を燃やしてる場所にいる人々はそれこそ必死に逃げてるだろう。でもまだ大丈夫な所もある、政府の指示で既に沢山の人々が避難場所へと向かってたりする。そんな焦燥の中、聞こえてくる音楽。誰かのスマホから誰かの車から、それだけじゃなく、町中に響き渡るスピーカーから……彼女の、最上亜子の歌が響き渡る。


 彼女はこの歌が変わらぬ日常を感じてほしいと思ってた。それに今泣いてる人たちの灯になれば……とも。そんな事を考えてる場合じゃないかもしれない。けど……生きる事を投げ出さないでほしい。まだこの世界は終ったわけじゃないんだから……そんな気持ちで歌ってた彼女。会場は外の混乱に負けないように盛り上がってた。けど……そこに目を付けた化け物がやってくる。大きな人の口をしたような化け物。その口の横から出てる腕は何本もあって、とても細い。がりがりの腕だ。そんな腕が汚い口の歯を掴む。

 そしてグググ……とその腕は歯を起点に開こうとしてる? 元から大きな口がどんどん開いてく。そして歯ぐきから血があふれてる。けどそれでもその口は――


「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」


 ――と笑ってた。そして百八十度くらいガバッと開いた口から、更なる口が連なるように出てくる。それがタワーに凄い勢いで向かってきてる。


 ガチンガチンガチンガチンガチン――歯が合わさってそんな音が聞こえる化け物が向かってくる。会場の人たちを捕食しようとしてる。でも、亜子は止まらない。そしてその会場の人たちもそんな化け物を気にすることはない。彼らの視線は最上亜子だけにくぎ付けで、それしかいらないようだ。タワーの外周が破壊される。それでも――それでも亜子は歌を止めなかった。ライブ会場に入ってきた口は、複数に枝分かれてして客席を襲う。亜子は力強くマイクを握りしめてた。

 夫が前に出る。子供たちが亜子を引き寄せる。それでももう、そこに口はある。けどその時だ。亜子の頭に声が響いた。


『力を求めなさい。小清水亜子!!』


 それは……その声を最上亜子は……いや、小清水亜子は知っていた。だからとっさに口を動かす。どこか遠くに向かって――


「ゼロオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


 ――と叫ぶ。 

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