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「何が、起こっておる?」
儂はホワイトホールを眺めてそうつぶやく。そして体にじっとりとした汗が溢れてる。それに早鐘のように打つ胸の音。やるべきこと……それを全てやると決めた。だからこそ、アーミュラ神にこのホワイトホールを開放したのだ。
魂を浄化させる場所。魂の欲を拭い去るこのホワイトホールに訪れた前と後では、飽和した魂の段階が一段上がる。だからこそ、より始祖に近づくために、必要だと判断した。
「ヌルルクよ……我らを、この宇宙を守ってくれ」
思わずにそんな風に呟いてしまう。かつての友の名。もういない、転生も何もできずに消えた友の名よ。もう誰も覚えてなどいないだろうが、儂だけはあやつを忘れる訳にはいかぬ。
なにせわれらは誓い合った。この宇宙を、この宇宙にいる全ての魂を繁栄させると。
「始祖の力……こんなことが……」
ホワイトホールから溢れて来てるのは強大な始祖の龍の力だ。この力を儂が間違えるはずがない。幾星霜……この力を感じて来たか……どれだけこの力におびえてきたか。
ずっと恐れておった。この力が目覚めるのを……
「まさか……ここで?」
宇宙の中心……そこに始祖の龍の体はある。それは間違いなどない。なにせ古龍様達がその身を犠牲に長い間封印を維持してくれておったのだ。それに間違いがあるわけがない。ならばこれはなんだ? 体はまだ目覚めてない筈じゃ。ならばこれは……このホワイトホールから発生してる始祖の龍の力は一体? それにこの中に入ったアーミュラ神はどうなった?
なにもわからぬ。かといってここで儂もホワイトホールに突っ込む……なんてことが出来ようはずもない。強大な始祖の龍の力は既にホワイトホールに行き渡っておる。ホワイトホールは完全に始祖の龍の力に飲み込まれたと判断するべき。ならばその中におるアーミュラ神は……
「食われた……というのか……」
何が起きた? 全く持ってわからない。ホワイトホールは魂の余計なものをはいでいく。過去をみせ、後悔を洗い流す機会をくれる場所じゃ。そして一度全てをまっさらにする。ホワイトホールは時空間と運命がねじ曲がっておる。
それによって、我ら神でさえ、その行いをリセットできる場所だ。全ての罪と後悔を捨て去って、魂は復活、新たなものにしてくれる。
なのになんだこれは……なぜにホワイトホールから始祖の龍の力があふれ出る?
「このままでは……」
始祖の龍の力がホワイトホールからあふれ出して周囲の星にも影響を及ぼすかもしれない。それはダメじゃ。儂はやらないといけないのか? アーミュラ神が中にいるとわかってるのに、ホワイトホールを消滅させないと……そう思ってた次の瞬間だ。
ジジジジジジジ――
と宇宙に変な音が響く。そしてホワイトホールの真上に開く異質な場所。白い一滴の雫が落ちてくる。そしてそれがホワイトホールへと飲み込まれたと思った矢先。
ホワイトホールはブクブクとその形を変化させていき、そして最初からそこになかったように消滅しおった。
「な、何がおきた?」
この最古の神である儂でも何が何やらだ。




