&312
「むむむ……やばいよ。これはヤバい。まさかこんな早く始祖の龍と邂逅するなんて……」
私は焦ってた。なぜならアーミュラが今まさに始祖の龍へと食われそうになってるからだ。いや、厳密にはもう食われてたね。パクっといかれた。でもまだアーミュラの魂が無事なのは私が仕込んでた力のおかげだ。なにせ現宇宙の力ではどれだけ強大でも……それこそズラララバライトやらゼーファスだろうと、大元は全ては始祖であるあの龍へと収束する関係上、現宇宙の力というだけで始祖の龍には通用しない。
それはもうどうしようもないというか? だからこそ、ゼーファスはアーミュラを利用して始祖を手が出せるところまで落とそうとしてたんだろう。でもまさかゼーファスもそのための前準備段階であるこのホワイトホールで始祖の龍に食われてその手段を失うなんて……ね。
「始祖は、まだ目覚めてないんだよね?」
私はまずはそれを確認する。すると私の傍にいるズラララバライトが「うむ」という。実際始祖の龍が目覚めたら、現宇宙は混乱の坩堝に陥るだろう。でもそれは起きてないから、まだ始祖の龍は現実ではめざめてない……というのは本当だろう。
「じゃあこのホワイトホールの方の始祖の龍はなに?」
私も最初は「ほぁ、これが始祖の龍の姿かぁ」とか思ってた。だってホワイトホールが見せてる幻覚とか幻……とか思ってたし。でも、「あれ?」とだんだんなっていった。「この力は……」とね。ピキーンときたよ。だってこの力は、始祖の力は凶悪だ。全てを傷つけようとする。全てを飲み込もうとする力。近くに行くだけでそれは感じることは出来た。
だから覚えてた。流石にホワイトホールがわざわざ始祖の龍の力を再現するか? って思った。いや、そもそも始祖の龍の方が上……頂点なんだ。それを再現なんてできるか? ホワイトホールが何なのかは私にはよくわからないけど、普通に考えて再現とかはそれこそ限界があると思うんだ。
そして始祖の龍の力はその限界を超えてる筈。だって始祖だもの。となるとこの目の前の龍が発してる力はなんだ? ってなるよね。つまりはモノホン? そして今、確信できる。これは本物だってね。
『わからぬ。だが、始祖の事はわからぬことの方が多い。だからいえることは、始祖なら何が起きてもおかしくない……だ』
なんて頼りない古龍だ。でも納得できるんだよね。あの始祖には知能なんてない。本能でしかうごいてない。だからこそ、本能でやろうと思った事はなんでもできる……のかも? それに今は目覚めかけてる。だから今まで起きなかったことが起きても不思議じゃない。
無法にも過ぎる。




