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どこに行くのか、この深淵の深い所で私はただ明かりになってる蝶を追う。この先には何が……実は始祖の龍の事がわかるとかあるのかな? とかちょっと思ってた。でも……ここには闇しかない。それ以外が何もない。
始祖に食べられた私。ここは始祖の腹の中なのか、それともホワイトホールのままなのか。
「ねえ……ラーゼちゃんでしょ?」
私は蝶に声をかける。だって私ではここがどこなのかわからないのだ。私は神としてかなり優秀だと自負してる。なにせ私程に早く上位まできた神なんてそうそういないだろう。
まあラーゼちゃんは誰もなしえてない『始祖』となってるが……まあけどそれはいい。そんな規格外だと競おうなんて思えないからね。だって私とラーゼちゃんではどこか基準? というか何かが違うんだろう。
私は神として優秀だったけど、ラーゼちゃんが神として優秀だったか? といえば、そうとは言えない。そして私は思う。今さっき私に襲い掛かってきた始祖の龍とラーゼちゃんの共通項。
どっちも『神』ではなかったのかもしれない。いやラーゼちゃんは神ではあった。でも……その成り立ちは普通の神とは違った。それに神に納まってはなかった。もしかしたら神は『神』に納まった時から『始祖』への道を絶たれるのかも?
「ラーゼちゃん……なんで何もいってくれないの?」
いつもはよくしゃべるでしょう。でも彼女は蝶のままこっちに反応してくれることはない。流石の彼女もここでは余計な事はできないのかも。
パキ……パキ……
と歩く度に崩壊が進んでた体。なんとか維持してたけど限界が近い。体を維持できずに、魂をそのまま更すことになるかもしれない。神にとって魂をさらすことは裸をさらすような……そんなことだ。恥ずかしい。
誰もいないけど……体という障壁がなくなったら、流石に私もこの始祖の龍に食べ尽くされるかもしれない。ここまで維持できたのもこの蝶……ラーゼちゃんが守ってたから。けど体が崩壊するという事は、それも限界が来てるからだろう。そうなると魂だって長くは持たないことがわかる。
「もしかして迷ってる……とか言わないよね?」
実は案内してる様子で迷ってたとかじゃないよね? そんな事を思ってると、蝶が私の周りでせわしなく動き出す。あぁ、これはごまかしてるなって思った。




