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私は体を引きずって蝶を追う。神になって体を引きずるなんてそうそうないことだ。それに……どんどんと体の崩壊が広がっていく。私はこの崩壊を止めることができない。
自身の魂……自身が構築した体のはずなのに、まるで他の何かが強制的に自身を分解しようとしてるかのように……でもきっとこれも抵抗されてるんだろう。そんな気がする。
私にはこの崩壊に抵抗する術がないんだ。だから本当なら私という魂は既に分解されてておかしくないのかも。こんな事……自身の魂を繋ぎ止めることができないなんて……これはこのホワイトホールの特性なのか? それとも始祖の龍の力なんでしょうか?
でも本当なら始祖の龍はここにはいない筈。私を飲み込んだ始祖の龍は未来のイメージであって本物な訳はない。という事は、これはホワイトホールという特殊な場所のせい?
魂を浄化する……そのゼーファス様の言葉を信じるのならこのあらがえない魂の崩壊もホワイトホールの特性……かもしれない。でも……
(この邪悪さは……)
ホワイトホールの名にふさわしくない……と思ってしまう。このまとわりつくような恐怖と恐れ……魂の根源からぞわぞわとしてくるようなこの気持ち。それに本当にこれがホワイトホールの特性だとするなら、こ邪悪さはおかしい。いいや、はっきりいおう。私は……
(私はあの始祖の龍がただの未来の幻だなんて思えない)
――ということだ。本当ならこのホワイトホールで見える可能性の一つに過ぎない筈の幻影なのはきっと間違いない。ホワイトホールはそういう場所なんだろう。けど始祖というのは何なのか、実際の所誰もわかってないんてない。
ただ一つわかってる事は始祖が私達の宇宙の始まりであり、それだけの力を持つ存在だということ。それは私達神でさえ、想像もしえない力であろうことだ。だから……もしかしたらこのホワイトホールでただ見せるだけの未来だったとしても、始祖の龍なら何かできる可能性はあります。
実際……ここに広がってる力は邪悪で凶悪。私の魂はこの力にあらがおうとしてる。これが本当にホワイトホールなら、こんなことはなかったんじゃないでしょうか? わからないですけど……それにここが既に始祖の影響下にあるという理由には他にも理由があります。
それは目の前の蝶です。この魂に影響を及ぼしてる力がホワイトホールではなく始祖の龍の力なら、それから守ってるこの蝶はつまりは始祖に対抗できるだけの力を持ってることになる。そんなのは私が知ってる限り一人しかいない。
神の頂点であるゼーファス様でもない。それが出来るのは……
「ラーゼちゃん」
彼女しかいないだろう。だって彼女もまた始祖だからだ。




