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「あっ……」
私は遂にバクン――と始祖の龍に食べられてしまった。そしてそのまま――ゴクン――と飲み込まれた。噛まれなかったのはよかったのかもしれないがそんなのは何も安心材料にはならないでしょう。だって私は食べられてしまったのだから。
てかこの始祖の龍は幻覚か何か……だと思ってたんだけど……なんで私は食べられてしまってるのか? そこら辺からよくわかってない。どういうこと?
「なんでこんなことに……ゼーファス様……聞こえますか?」
私はこの状況を切り抜けるためにゼーファス様に助けを求める。それはきっと正しい判断だろう。だってこのホワイトホール自体が彼の管理下にある宇宙だ。そしてきっと私の事、見てる筈。ならばさっさと来てほしいが……このホワイトホールに現れた始祖の龍がどこまで本当に始祖の龍なのかはわからない……
(もしも……もしもこの始祖の龍が本当に始祖の龍だったら……)
あれ? そもそもゼーファス様でもどうすることもできないのでは? となんか思えて来た。だって始祖の龍だよ? さっき私の壁とかシールドとか……そんなのはことごとく無意味だっだ。自分があんなに無力だと感じたのは神となってはじめてことだっだ。
でもあれだけこっちに何も成せなかったのは……この始祖の龍が本物に限りなく近いから? いやいやいや……私はブンブンと首を横に振るう。ここに始祖の龍が現れるわけない。今だってきっと中央で始祖の龍は眠ってるはず。
そのはず……です。
反応は帰ってこない。ゼーファス様が動いてると信じるしかない。私は深淵の底にいた。始祖の龍に飲み込まれて、そのまま私はここにおちてきたのだ。ホワイトホールに脚を踏み入れて、そこにいた始祖の龍にのまれた。
私は一体ホワイトホール内で何回落ちるのかっていうね。そもそもがホワイトホールはブラックホールとは逆の特性を持ってるんじゃなかったの? なんでこんなに飲み込まれないといけないのか……これじゃあブラックホールだよ。
「なんで私は無事なんだろう?」
そこが疑問だった。いやきっと本物の始祖の龍ではないから……だよね? そうだよね? ホワイトホールnに現れた始祖の龍は未来の始祖の龍だから、幻覚みたいなものだった……と。じゃあなんでこっちのシールドとか壊してたのか? となるが、きっとホワイトホールはすごく再現してた……という事にしておこうと思う。
それよりも……だ。私はまだ生きてる。ホワイトホールの外に排出してくれるならよかったのに……なぜかそれはない。だから私の魂はまだきっと浄化されてないんだろう。そもそもが今までホワイトホール内で起こった事を思い出して私は思う。
未来と過去の自分……狭まる未来。その先にいた始祖の龍との邂逅。そして食べられた。
「あれ? どうやってこれ魂が浄化されるの?」
疑問しかない。