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「これは必要な事なんですよね?」
「やれることは全てやっておくべき……とは思わぬか? その方が後悔は少なくてすむ」
「後悔をなくすとかは?」
「神といっても後悔は無数にあるものじゃ。いや、長く生きてればそれだけ後悔は多くなる。じゃがそれでも振り返らぬようにするのが大切だと、儂は思っておる」
「そう……ですね」
なにか含蓄があるゼーファス様の言葉。やはり長く生きてる分、色々なことがあったんだろう。神にはおわりはない。けど……けじめをつけないといけないときというのはある。
ただ何もせずに過ごしてるわけじゃないのだ。決断の時は多い。神は命を扱ってる。それも一つ、二つじゃない。一体の神の下にある命はそれこそ数えきれないほどの命だ。
そしてそれらは全て、神の意思一つで生かすも殺すもできるのだ。宇宙を育てる、星を育てる……そのための取捨選択。命を宿した星に見切りをつける時だってある。
その時に、失われる命はそれこそ膨大だ。星の成長の頭打ち、進化の失敗。色々な原因で星に見切りをつけることはある。勿論それに何も感じない神も多いだろう。
それそこ、それらの命一つ一つに気持ちを寄り添えてたら、キリがないってのがある。でもなるべく無駄になんてしたくないだろう。それに命は輪廻にもどってまっさらになったとしても、神として私達は覚えてるのだ。
どんなに失敗しても、またいつか幸せにしてあげる……という贖罪はある。私達神と、大抵の生命の時間は違うから……いくら生命と交流しても、募っていくのは願いばかり……
「私も後悔はしたくないです」
だから受け入れよう。私はホワイトホールの中へと入り、その宇宙の異様さの中に巻き込まれる。魂を浄化してくれるらしいホワイトホール。始祖のパートナーに成るためにここに来ることが必要なのなら、きっと何かあるんだろう。
中は案外普通の宇宙のような? けど私が一つ動作をするたびに、そこに私が残った。以前の私。一秒前の私がそこに現れてる。そしてふと後ろをみる。すると、無数の私が、このホワイトホールの中で止まってる。
「これは……」
今もこうやって私が「こ」 「れ」 「は」――といった言葉の区切りでまた止まった私がいる。前に進もうとおもってたけど、逆に私はこの無数の私の中へと進み行く。なぜかはわからない。けど、こっちだと私の魂が言ってるように感じる。
止まってる私にはどうやら触れられないようだ。だから避ける必要なくすすめる。けど歩くたびに再び重なる様に過去の私がそこに残る。これにいったい何の意味が? と思ってると、いつの間にか私には私の背中が見えるようになってた。
「これはまさか……私の未来?」
自分自身の未来をホワイトホールのが描き出してる? ということは……この先には私の結末があるのかもしれない。そう思うと早鐘のように胸がなる。高鳴るというよりも、不安のような音だけど……




