表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

222/2418

Σ57

「獣風情が……」


 吹き飛ばされた鉄血種の少女がそう言って瓦礫の中から這い出てきた。その姿は私たちがやっとの思いで砲台を当てた時と同じくらいには負傷してる。少女の右わき腹は綺麗になくなってた。

 

「ふん、鉄血種風情がどうした? ここはラーゼ様がかかわってる地であり、国だ。すでに貴様らが好き勝手にできる場所ではないと知れ!」

「誰よラーゼって。そんな奴知らない。私たちは何者にも束縛なんてされないの!」


 渦の様に脇腹が再生される。そして少女は消えた。

 

「グルダフさん! 気を付けて!!」


 私はあれの恐ろしさを知ってる。だから警告の為にもそう叫んだ。本当はもっとちゃんと教えてあげたいけど、そんな時間はないんだ。だって少女が消えたらそれは一瞬で起こる。私はグルダフさんが無事である様に祈るしかできない。すると次の瞬間、何かが吹っ飛んでいった。ド派手に壊れる建物。凄い戦いだ。私たちがアンティカに乗ってやっとできるような戦いを彼らはその身一つでやってる。

 

 これが他の種族同士の戦い。自分たちが相手にしてきたのもこのくらいはあったかもしれない。けど、やっぱりアンティカに乗ってた時と、乗ってない時では迫力が違う気がする。

 

「うわあああああ!! お前なんで!!」

「獣の勘を舐めるな」


 どうやら吹き飛ばされたのは少女の方だったようだ。早すぎてこっちからは何が何だかわからなかった。けど、倒壊した建物の中から勢いよく飛び出てきたのは少女のほうだった。グルダフさんは本当に勘で吹き飛ばしたのかな? 実際、あれには第六感しか対処しようがないと思ってたけど、あそこまで綺麗に吹き飛ばしたのを見るに、実はわかってたんじゃ? って思っちゃう。

 

「勘なんて物で……」

「ならもう一度試してみろ。できればだがな」


 そのグルダフさんの挑発に少女は躊躇う。それはそうだね。さっきの傷は治ったけど、今の傷は治ってない。ちらちらと視線を動かして、鼻をぴくぴくと動かしてる所を見るに、多分餌を探してるんだろう。奴らは人を食らうと回復できる。だからその獲物を探してるって感じ。

 

(けど、おかしくない?)


 だってわざわざ探さなくても、私がいる。一番の少女のお気に入りの私の姿は見えてるはずだ。あの移動方法で私を狙うのが一番確実じゃない? なんでそれをしないの? いや、されても困るけどさ……けどこの違和感……それをしない理由……いやできない理由がある? 少女の左顔の半分くらいが吹っ飛んでる。それでも普通にしてるんだから驚きだよ。

 

 まあ流石にあの不死身性にもなれて来た感じはあるけどね。今までそれなりに他種族を相手にしてきたけど……流石にここまで痛みとかを現さない種は初めてだ。

 

「お前を殺したって何も楽しくない」

「なら、亜子殿を殺すか? 俺が阻むがな」


 そう言ってグルダフさんは構えを取る。武器は使わないんだ。見えないけど、ラーゼの側近にはそれぞれ強力な武器が渡されてるはず。まあ私の銃もその一つといえば一つなんだけどね。確かグルダフさんのは巨大な斧だったはず。どこかにしまってるのかな? 実際、この人たちとはそんな話した事ないからわかんない。けど持ってきてないなんてことはないはず。

 

「お姉さんはあきらめないよ。だってもう私のだもん。私が頭の中を吸い出すの。それをどうしても邪魔するってのなら、汚れるのはいやだけど……殺したげるよ猫さん」


 一体いつ、私があんたの物になったのよ。そういいたいけど、流石に割り込めない雰囲気。もう、人が入れる領域じゃない。悔しいけど……少女はその白い手を黒い布からだす。その真っ白な腕から赤い血管が浮き出して、そして真っ赤に滲みだしたと思ったら一気にあふれ出して真っ黒に硬質化した。少女の腕は二対の武器となってる。

 

 そしてグルダフさんは静かに息を吐いてる。一触即発の空気……こっちの心臓が持たないよ。すると先に少女が動いた。今度は消えたりしない。真正面からグルダフさんに目がけて突進してくる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ