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ものすごい渦が終わりを告げる。すると……周囲にキラキラとした何かが生まれてた。それは……
「岩?」
『それは! なるほど……』
私にはただの石に見えるそれ。手のひらには収まらないが、片手で持てないこともない大きさの岩なんだけど……なにかあるのだろうか? 不思議なことにこの岩には何もない。いや正確に言うなればこの岩は『無』だ。
でも無なのにこれは『有』になってる。どういうことかというと、無なのに存在してるということは有るということだ。あるということはこれは『有』になってる。でも、これは無である――と私の感覚が告げてる。
神になって、力に敏感になってる自覚は有る。きっと知性がある神とか龍とかはそこらへん誤魔化す術だって色々とあるだろうから、こんなペーペーの神である私の感覚では相手を推し量るなんてのはきっとできないだろう。
でもこれは岩だ。知的な? なわけはない。ならば私が間違うわけもなし。私はそもそもが思慮深いほうだ。考えてから行動する……というのができる側なのた。
ラーゼのやつのように突発的な衝動で行動するなんて愚の骨頂は侵さない。ぞれだけ私は考え深いのだ。でもこれはなにかわからない。ズラララバライト様が興奮してるからきっとなにか重要な物なんだろうけど……でもこんな無のような岩が重要なものだろうか?
「なんですかそれ? 無のように感じますけど?」
『そうか、お主はまだ神になったばかり。これがなにかわからないか』
そういってズラララバライト様はその大きな爪に一つの石を吸い寄せる。そしてこういった。
「これは星の種だ」
「星の種?」
そういえばなんか聞いたことあるような気がする。確かに星は最初は小さな岩でしか無いのだと。それを『育てる』のも神の役目とういことも。けど……私はこれは見たことなかった。
いや、はっきり言おう。こうやって目の前にしても、これがあの巨大な星になるなんて実際信じられない。だってこんな……ツルツルで、ゴツゴツ……何よりもこれにはなんの特別感もない。星だよ? あの生命が溢れてる星。それを想像すると、これがあれになる? と思えるわけない。
『無というのはあながち間違いないではない』
ズラララバライト様は無と表明してくれた。無の価値があるか? もしもこれがさっきの渦の影響でできたのなら、それこそあの膨大で膨らんだエネルギーの影響を受けてても良さそうなのに、これには全くそれがない。
『全く、このような方法で星の種を生み出すとは……そう、それは無。だからこそ、全てを受け入れる事ができるのだ。そして染めるにも都合が良い。何もないからこそ、なににでもなれるのだ』
そんな事をズラララバライト様はいってきた。てかラーゼはこれを狙ってた? あいつがそんな考えをしてたというの? なら私は利用されたのか。てか下手したらドラグが犠牲になってたというか……ドラグは?




