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思考を加速して、このピンチを乗り切る方法を考える。結論――「無理」――だった。なので私は一度死ぬしかないみたいだ。けどそれはある意味でいいかもしれない。
一回死んでこいつらを誤魔化す。なにせ今の状況は私に不利すぎる。ここから逆転の目はほぼない。ならば……だ。ならば一度仕切り直すためにも彼らには撤退してもらいたい。
いや、撤退という言葉では彼らは納得しないだろう。そう勝利をプレゼントする。私は一時的な勝利になんて興味はない。最終的に勝てればいい。一戦一戦にどれだけの意味があるのか……それは最終的に自身が決める事。負けを引きずりすぎることもよくないし、気にしなさすぎなのもよくない。
すべては学び。そしてそれをどう生かすか。なのでここは負けよう。それを認めようじゃないか。
お前たちはよくやったよ。私を……イセノ神を倒したのだ。その名誉……栄誉を与えよう。それで満足して引きなさい。私はそういいつつ『死』を選択する。
「やったな!」
「ああ!!」
「俺たちが勝ったんだ!!」
神達がこの空間で勝利をかみしめてる。けどまだ鋭い視線を崩さない神がいる。
「ローレン神。もう大丈夫ですよ。我々は勝ったんですよ」
「なにか……あっさりしすぎてる気はしないか?」
「ははは、用心深いですね。けどそういうところもきっとあなたが戦の神といわれるゆえんなのでしょう。ですが、結果は結果です。私たちは隙の無い準備をした。
それは一番ローレン神がわかってるのではないですか?」
「それはそうだ。なにせ相手はあのイセノ神だったからな。奴の契約龍は古龍だ。条件として、古龍と引きはがすのは絶対条件だったわけだからな。そしてあの女の力を封じる。あいつは危険だった」
うんうんとローレン神の言葉をその場の皆が聞いてる。そしてだからこそ……という。
「我々は皆、イセノ神の危険性をわかってました。だからこそ、穴がないような作戦を練りに練った。これは我らの作戦の勝利なのです」
「ああ、完全勝利だ!」
「ここまで上手く行くとはな!!」
「いや、これだけの神が動いたんだ。完璧ではなくてはならない」
皆が勝利を味わってる。そして自分たちが上手くやった結果だと……確かにそれはそうだとローレン神も思う。やれると事を皆がパーフェクトにやった結果。
上手く行きすぎてるとローレン神は疑ってしまってるが、上手く行く為に頑張ってたわけで、大半の神はこれが当然の結果……だと思ってる。
(これでいい……これでいい? のか?)
それはきっとローレン神の戦神としての直感なんだろう。それが違和感を訴えてる。




