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私が何が言いたいのかというと、こいつがこんなに色々と把握してるのはおかしい……ということだ。だってこいつ、このルドルヴルヴとかいう古龍は封印をされてたんだ。
その間のことを把握してるって普通におかしいじゃん。それとも……封印されてても意識はあった……ということだろうか? いや、それでもおかしいか。だってそれでズラララバライトが死んだことは把握してたとしよう。けど……どうやって私のこと……そして私の新生宇宙の事……それをわかる? わからないでしょう。
でもこいつは何故か新生宇宙にいる私に接触してきてる。接触と言ってもこの念話だけだけど……でもこれもおかしいからね。
「ルドルヴルヴ……ズラララバライトが封印を解いた古龍ですよね。なんですか? ありがとうなら私から伝えておきましょうか?」
私はとりあえずそんなことを返してあげた。念話なんだから別に口にする必要はない。けど傍のズラララバライトにも現状がわかるように声に出した。ズラララバライトは私からルドルヴルヴという名前が出るなんて思わなかったんだろう。その凶悪そうな目を見開いたのを私は見逃さないよ。
美少女たるもの、細やかな機微には敏いんだよ。取り入るにも突き放すにもそういうのは大事だからね。
『ぬはははは! 面白いな。だが必要ではない。何も言うことはないからな』
「そうですか」
意外だった。ありがとう――はちょっとした嫌味というか? そんなのだったわけだけど、笑って流されてしまった。だって始祖の封印とは違ってこいつは望んで封印されたんだ。
だからその状況を考えたらズラララバライトに「ありがとう」はないとわかる。けど私はあえて……挑発的な意味でそれをいったんだ。私の予想的には「ふざけるな!」とかいう言葉が次に来ると思ってたんだけどね。
そこまで強い言葉じゃなくても、なにか文句は出るだろう……と予想してた。けどどうやらそんなのはまったくないらしい。掴みどころがない。
こんなことならルドルヴルヴとかいう龍がどんなやつなのか事前にちょっとはズラララバライトに聞いておくべきだったか? いや、今更だね。だってこいつが私に接触してくるなんて誰が予想できた?
誰も予想なんてできなかった。だから仕方ない。今更なことを言っても始まりはしない。後悔に意味なんてない。今はルドルヴルヴの狙いを詳らかにする事に集中しよう。
なにせ現宇宙を捨てて私の新生宇宙にきたズラララバライトと違って、ルドルヴルヴはきっと現宇宙を捨てるなんてことはしないだろうからね。そんな薄情なやつじゃないだろう。




