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「なにそれ? 私には欲求が足りないとか言う気? それか野生? 本能? それが弱いとかそういう事?」
『あれほどに野性味を出せとはいわない。理性があるからこそ、きっとこの宇宙は向こうよりもよくなるだろう。なにせ始祖がまともかどうかは大きい。
まあ貴様がまともか……はわからなんがな』
なんだその挑発するような言葉は。私の事煽ってやる気出させようとしてる? けど残念、私は別に向こうの始祖に対抗しようなんて思ってない。そんなのに意味も感じないしね。もしも……だ。もしも向こうの始祖が私よりも「かわいい」とか言い出したら全力でぶつかってたかもしれない。
けど向こうの始祖である龍はそんなのに興味ないでしょう。なにせさっきもズラララバライトが言ったように、向こうの始祖が矯味があるのは破壊と再生なんだからね。あとはきっと沢山暴れたかっんだろう。
「ん? ねえ……そもそもなんだけどさ」
『なんだ?』
私はふとした疑問を口にする。
「なんで始祖は破壊と再生を繰り返してたの? いや、そういう存在だって前に聞いたけどさ……その原動力はなに?」
『そういう存在というだけでは足りぬか?』
「うーん、それが生きがいだったって事?」
私はなにか引っかかる感じがあるんだよね。確かにそういう存在……その言葉は説得力がある。別に理由なんてなくたって、あれはそういう存在なんだ――と思ってしまえばそれ以上考える必要がなくなる。
けど……それだけでずっとこんなことを続けられるだろうか? いやまあ、全ての推測は「そういう存在」というだけで塗りつぶされるんだけどね。
「ねえ、あんた達古龍は始祖の龍と会話位はしたことあるんだよね?」
『それはそうだな。だが、あれが会話と言えるのかは疑問だな。あれには言葉も何もないからな』
「全ての始祖なのに?」
『いっただろう? あれは野生だ』
確かにそれは聞いた。聞いたよ。けど……さ。それだと本当にますます謎じゃない? それだけの存在がなんの知識も、知能もなく誕生するもの? 突然変異とかなのだろうか? そもそも始祖の龍はどこから来た? どこで発生したの? 私も始祖になった。私はきっとそれが正しい道なのかはわかんないが、成長を積み重ねてきたはずだ。
そして最終的に自分の宇宙を生み出した。与えられた宇宙じゃない、私だけの宇宙だ。だから私も始祖なのはわかる。でもそうなると、向こうの始祖の龍だってそういう過程とか在るんじゃない?
でもズラララバライトの話を聞く限り、現宇宙の始祖に知能やら知識はない。本当にただの野生の生物のようなんだよね。
『あれはただ破壊したいようだ。だからこそ、創る。そして壊して自分に満足感を与えようとしてる……そう思えたな』
創造から破壊が在るんじゃなく、破壊が目的で創造してるということか。作られた側はたまったものじゃないね。まあだからこそ現宇宙の命は始祖を抑え込んでるわけだけどね。
ラスボスにはふさわしい悪辣さで傲慢さだと思った。




