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#21

挿絵(By みてみん)

 壁の上に立って初めて分かる事もある。それは壁は外周だけには留まらなかったと言うことだ。もう一つ中央部分を囲う様に壁はある。

 

(あれかな? 最初は内側の壁の範囲がこの都市の前進だったとか? この外側の壁は大きくなった後に作られた物)


 そう考えた方がしっくりと来る。

 

「あの内壁の向こうに偉い奴等は居るはずだ」

「でしょうね」


 見た感じ、中央から外にかけて建物のレベルが落ちてるのがわかる。まあ大通りに面してる部分はそれなりの体裁を保ってるようだけど、路地が入り組んでそうな場所はゴミの吹き溜まりのような……いっちゃ悪いけど、上から見てるからそんなのがよく分かる。かなり大きな都市だしね……それ相応の闇が見える感じ。まあ私には関係ないけど。

 私達の目的はゴミの吹き溜まりじゃなく、綺麗な方だ。スズリが言うように内壁の向こうの建物は皆豪華に見える。あれは多分壁の向こう側が富裕層か支配層の居住区なんだろう。後は重要機関の様な物は内壁の中側に集められてると見える。普通ならこの巨大な外壁を突破するのも困難だろう。そして更に奥にまた壁があってその奥に大切な物があるとなると、それこそそこに居る奴等は胡座をかいてると見える。実際まだここの奴等は私達の侵入に気付いてない。

 偉そうにするだけで無能な奴等に、おしっこチビッちゃうくらいの恐怖って奴を教えてあげよう。私は片手を上げて声を出す。

 

「目指すはあの内壁の向こう! ここの権力者連中にアンタ達の力を恐怖として植え付けてやりなさい!!」


 その言葉を合図に白狼達は屋根を駆けて壁を目指す。もしかしたらこの街の何人かは気付いたかもしれない。けど、それでもうどうにかなる物でもない。止まる事なく白狼達は内壁も超えて権力者が築いたエリアへと足を踏み入れる。さてここらで白狼達には適当に暴れてもらおう。その間に私達は最高権力者を押さえる。ここまでは順調そのもの。

 まさか討伐隊が出発したのにその討伐対象が自分達の腹の中へ現れるとは露ほどもおもってないだろう。この警備の緩さを見ればそれは確定的だ。取り敢えず全部殺しても良いんだけど……変な恨みは買いたくない臆病者でもある私。だいたい権力者なんて屑だろうし死んでもいいよね? とは思うけど、白狼達にはここらの建物を破壊して貰う。そっちの方が派手だからね。

 そんな中で誰かが死んでも私はしらない。全ての責任はスズリへと押し付けるき満々である。

 

「どうベルグ?」

「奴の匂いは覚えている。この雨でもここまで来たならば我ならば追える!」


 さすがはベルグ。クンクンと鼻を動かして最高権力者の位置を突き止めたようだ。この雨なのにそれでもわかるとは、相当の恨みがありそうだね。ではプランの最終段階を開始しましょう。

 

 

 白狼達か暴れ出し、一気にアドパンは混乱の坩堝へと落ちた。なんせいきなり中枢が攻撃を受けたんだ。遠くで派手なドンパチの音が聞こえてる。そんな中、私とスズリはというとアドパンで一番大きく高い建物に侵入してた。流石は都市というだけあって中は文明を遥かに感じる。なんせ扉が自動で開くし、防護扉みたいなのが降りて行く手を阻もうとしてくるんだ。

 ワクワクものである。まあほぼベルグには意味を成して無いけどね。私は一回り小さい白狼に乗ってベルグの後をついてくだけの簡単なお仕事です。時々接触する警備の獣僧兵団だっけ? の奴等も僅かな数ではベルグの相手にもならない。一瞬で肉塊に変わってた。それにしても私はちょっと気になってた。

 

(幾らなんでも楽勝過ぎじゃない?)


 とね。だって仮にも都市だよ? それがこんなゆるゆるの警備で言い訳? ある意味、それだけデカイ都市だから今まで攻められた事もなく、こんな事になってるとか? けど一応私は罠も警戒して身体を力で覆っとく。これしとけば、たとえ不意打ちや流れ弾が来たとしても私には傷一つつかない。

 

「近い! 近いぞ!!」


 そうこうしてる内にあっという間にこの都市のトップを追い詰めたらしい。曲がり角を曲がり頑丈そうな扉を意に介す事なく突破すると、そこにはかなりの数に守られた白く高そうな服を着込んだ年老いた犬っぽい奴が居た。まあその他にも偉そうな奴等が何人か居る。けどその犬っぽいのがトップだと私はなんとなくわかった。だって他は顔を歪めながら、自分達を守ってる兵士達にベルグを倒せと無茶を言ってる。

 その犬っぽいやつだけが静かに佇んでるんだ。それは上に立つ者の毅然とした姿だと思う。なかなかやる……そう思ってると隊長格であろうか? 銀鎧に身を包んだシュッとした顔のゴールデンレトリバーが兵士を前に出し銃を構えさせる。私の持ってるおもちゃっぽいやつじゃなく、まさに軍隊で採用されてそうな姿したちゃんとした銃だ。

 けどカートリッジがあるようには見えない。変な部分はいっぱい見えるが、きっと私の銃と同じで魔力を込めて撃つタイプなんだろう。てかこの世界の銃は多分それしかない? すると銃に光が行き渡り銃口が光る。隊長の「撃てええええ!」の合図で一斉に銃から光が放たれる。けど当たる訳はない。ベルグと白狼は左右に散って狙いを分散。そして風のごとく速さで近づき兵士達を蹴散らしていく。

 

「くそ!!」


 銃が無意味だと判断した隊長は各員に腰の剣を抜かせた。けど、それでもどうにも成るわけもなし……もともと銃をメインで剣はおまけ? 程度の扱いでベルグや白狼という種に通じるわけない。最後の一人となった隊長をベルグが噛み砕こうとしたそのとき、年老いた犬っぽい人が声を発した。

 

「やめたまえ! 私に用があるのであろう。君たちは話も出来ない蛮族ではなかろう」

「ぬけぬけとよくもそのような事が言えるな。我等は貴様らの魂にまで恐怖を植え付けに来たのだ! 二度と我等に手を出せぬようにな!!」

「それならば、逆効果だな。我等は国であって個ではない。我らが恐怖に屈した所で、更に上は脅威を許してはおくまい。他の場所からさらなる大軍が押し寄せる。それだけじゃ」

「数でしか語れぬ弱者どもが……」


 けど数は脅威。それをベルグもわかってる。それこそ、ゼルラグドーラやあの始祖の狼クラスならどれだけの数でも関係なんてないだろう。けど多分あのクラスは世界へと干渉はしない。そんな気がする。てかアレは宛にはできないしね。私はここでは居ない感じで行きたかったんだけど……言葉ではベルグやスズリでは分が悪いだろう。

 

「それで自分達が助かる為にどんな条件を出してくれるのかしら?」

「む……ほう……」


 私をみた犬っぽいお爺さんがその毛に隠れた目を初めて見開いた。それはまるで私を見て驚嘆したような反応。え? まさか私の美がわかっちゃう? わかっちゃうの? 中々見る目あるじゃんこの犬。やっぱり贅沢してる奴はそれなりに真否眼があるようだ。私はいい気になってフフンと胸を張る。

 

「なんとも不思議な力じゃ。感じたこともない存在感を感じる」

「そっちかーーー!!」


 ガックシと私は膝をおる。それって私の中であって外じゃないじゃん!! あーあ、期待して損した。やっぱり犬は犬だね。もうガブッと行って良いんじゃね? とか思った。

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