&164
「なあ!? おい! わかってるのか? 全ての美の神。その頂点に位置してるのは俺なんだよ!! 俺様カサノヴァ様だ!!」
そんな風にそのでっかい顔を寄せてくる。私の三倍くらいある顔。それが本当に超絶に綺麗なら得した気持ちになるかもしれない。でも……実際はこのカサノヴァという神は厚化粧だ。
それにその顔は四角くて、エラも大きい。鼻筋は通ってるが、かなり厚くて大きいし、鼻の穴も……それにその四つの目……一つ一つの目は実際綺麗だ。まるで宝石のよう。上下に並んでるんじゃなく扇形のようにその目は並んでる。
左から緑、黄色、青、赤……そんな色だ。でも顔が近づいてきたから私は気づいた。
(額にもある?)
私がそれに気づいたのは、額の一部分にもアイシャドウみたいなのが引かれてあったからだ。どうやらこのカサノヴァという神の目は四つではなく五つありそうだ。
まあどうみても、男のなのに女の格好をしてる神……なんだけど……けど宇宙によって美の基準って変わるからね。ただ変わらないのは、私という存在がどの宇宙でも「かわいい」という定義を覆すことだ。私は世界のルールを改変してるといっていい。
「私は私の可愛さが全宇宙一だと思ってます。それに変わりはありません」
「ほほー。言い切るな。私の美がお前に劣ってると?」
なんか最初の友好的な態度はどこへやら、カサノヴァという神は私を完全に敵……としてみてる。いやライバル? 私の美の基準では全く持ってライバルにはなりえないんだけど……だって私のかわいいにカサノヴァという神はちょっと……ね。当てはめるのが難しいよね。
いや、別に男性よりの見た目の女性が頑張ってるのを否定してる訳じゃない。そういう人だってかわいさってのはある。でも私的には彼女はかわいいの定義……美の定義を私的には間違えてると思うんだ。
かわいいや、美しいってのをフリフリでこてこてした化粧や服装、髪型で表現する事だけがかわいいや、美しいじゃない。それにその無駄にでっかいおっぱいを強調してるのも……それはそれで下品な程だよ。
かわいいも、美しいも、私の中では表面的な事じゃない。そういう「見た目」的な表現じゃないんだ。だからその表面的な部分にだけ頼ってるように見えるカサノヴァという神に私はいってやる。
「貴方の美を私は認めません!」
――てね。




