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「おくつろぎですか?」
「きゃあ!?」
いきなり声をかけられてびっくりした私は、その身体能力を活かして一瞬で距離をとる。
「すみません。驚かせたのなら謝罪をさせてください」
そういってその大きな頭を下げるそいつ。いや、頭……というか、本体……みたいなそれ。なにせこいつは大きなイモムシに人間の体がついてる……みたいなそんなやつだ。実際最初に見たときは「美味しそう」とおもった。
私は逃亡生活も長かった。だからこそ、栄養価の高い虫って食料に見えるんだよね。だってこんなに大きくてぷりぷりとしてる虫なんてそうそういない。なんか青い水晶のような丸い部分が体に8つ、両側に大きくついてるから、計16あるけどあれはどんな味がするんだろう? と私は思ってしまう。
けど流石にそんな舌舐めずりをして「ゴクリ」と喉を鳴らすとかはしない。相手は招待した神の眷属だ。下手に問題を起こすようなことは……いや、すでに問題は向こうから起こしてるけど……
(そうだ、もう戦闘に出てもおかしくない筈だよね)
私は警戒する。だってここの親玉である神がラーゼを拘束して連れて行ったのだ。それに対して、私は怒る権利があるのではないだろうか? いやある。てか……ここで怒らないのは不自然では? こいつもさっきまでと何ら変わりない感じで接してきてるが、こっちを探ってる気配も感じる。
そう思ってると、眼の前のイモムシ人間はこういってきた。
「貴方、あの神に不満がお有りのようですね」
ドキッとした。見透かされてる。こいつは正面には目のようなものはない。2つの触覚がゆらゆらゆれてるだけだ。
「不満? 何を根拠に?」
「ふふははははははは! それが証拠ですよ。普通は自身の神に無礼を働かれたらまずは眷属が黙ってなんていない。なにせ私達の絶対の上位存在が主なのですから。
主にされた無礼を許せる眷属など……元からそういう感情をもった者を眷属にでもしないと起こりえません。なにせ私達は普通は生み出されるものですからね」
どうやらあのイモムシ人間には全てがバレてるらしい。それに普通は眷属は神の力によって生み出す……というのも聴いたことがある。てか他の眷属はそんなふうにしてたはずだ。例外は私とドラクくらいだろう。
「それで、そんな私になんのよう? もう用済みだし消しに来たの?」
「違いますよ。あの神に不満があるのなら、貴方とは良い関係になれるのでは? と私の神は考えているのですよ」
そんな風にそいつは言ってくる。




