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「それならやってみましょう! 飛び込めば入れるでしょうか!?」
なんかいきなりその人はとてもテンションが高くなった。さっきまでぼそぼそと喋ってたのに、いきなり元気溌剌な声になって私のお腹を爛々とした目で見てくる。
ワカメのような長い前髪に隠れてるはずなんだけど、その輝きがみえる。それだけきっとやってみたいんだろうね。てか行ってみたいのか。自分達がいるこことは違う……それこそ他に数多ある宇宙とも違う私が生み出した新生宇宙へと。
「待ってください。落ち着いて。早計な事はできない。そうでしょう。まずは出来る限り外からの観測から始めるべきです。そして色々と検証していく。
それには勿論、ラーゼ様の協力が必要ですが、よろしいですか?」
私にいつも対応してくれるその天才イケメン君が皆のテンションを上手く調整して、落としどころを見極めてくれる。この中ではかなり若そうなのに、いつも私への対応に出張ってくるのは彼なんだけど、それって私がイケメン好きってのをわかってて彼を寄越してるんだと思ってたけど、単純に能力が高いから……なのかもしれない。
いや、私だって露骨に嫌な顔はしないよ。ただテンションが下がるだけだ。女の子なんだから、やっぱりイケメンは好きなんだよ。それは仕方ないよね。
「もちろん。それに協力しあう関係じゃないですか? 私は皆さんの頭脳を、皆さんは私の力……つまりはどっちにも有意義な関係という事です。とっても素晴らしいよね」
そういって私は手を合わせてニコッと笑う。素晴らしい関係性だよね。まあ私は色々と面白い事を持ってくるから、彼らに受け入れられてる所はある。彼らの協力を得るには、彼らが興味を持つ何かが必要だ。
それを提供してる内は彼らは私の味方……いや協力者でいてくれるだろう。でもそれを提供し続けていくってのは案外大変?
(いや、宇宙……全く新しいルールで作られる宇宙なんだ。彼らがいくら天才でも、全ての興味を解明なんて、そうそうできるものじゃないよね)
それだけ宇宙とは壮大で、雄大で、そして深い筈だ。それこそ私が思うよりももっともっと……ね。
「そういえば……よろしいですか?」
「何かな?」
「ラーゼ様は今は新たな宇宙を誕生させたことにより、そのお体にも変があったようで。今は聖杯のエネルギーもより多く受け入れらるようになったとのこと」
「そうだね」
「ですが外に垂れ流してる」
「うぐ……」
痛いところつくね。まさかそれを責める気? 確かに私がいまだに余剰分……ではないが、聖杯が生み出すエネルギーを垂れ流すのはこの辺境の宇宙の戦いをさらに長引かせる要因になっちゃう。それは自覚してる。
だからそれを辞めろとでも?
「いえいえ、別にそれはいいのです。そんなことに興味を持ってる人物はここにはいないでしょう。寧ろ色々な現象が観測できるのでありがたがってる者の方が多いくらい」
「あはは。それはよかった」
私も大概だけど、ここの天才もいい奴というか善人とかじゃないんだよね。結局は自身の興味を惹かれる研究が一番だからね。まあ正義や悪……そんなものを語る気もないし、全然いい。
けどそれならなんでこの話題を?
「私が言いたいのはなぜにラーゼ様がより多くのエネルギーを受け入れらるようになったか……です」
「それは新生宇宙をつくったからじゃない?」
それしか考えられない。
「確かにそうですね。けどそれは原因の一つかもしれませんが、本当にそうなのかはわからない。そうじゃないですか?」
「それは……そうだね」
確かに彼のいう通り。私は憶測で物をいってる。でもそっか、天才たちはそこら辺も解明したいってことだよね。




