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「あの宇宙と私の宇宙は違う……そう違う筈だよね」
つまりは他の宇宙を踏襲するなんて考え自体が間違ってる。でもそうなるとなんの指針もない。道も何もない大地……普通はどっちを選ぶかと言ったらとりあえず道が続いてる方を選ぶだろう。だってそっちの方が希望がある。
誰かがいるかもしれない。誰もいなくても、誰かが残したものがあるかもしれない。それに道が続いてるのなら、その先には家とか集落とかあるかもしれない。
そんな色々を一つの「道」は教えてくれる。だからこそ、誰もが道を求める。失敗したくないからだ。当たり前だよね。私だってそうだ。だからこそ、私だって道が欲しい。でも……どうやら宇宙を作り出すというのは先人の道を参考にはできないらしい。
だって私の今の力……この場所にある力では古龍を何体も生み出して補助をさせるなんて事はできない。きっと私の始祖の宇宙はとっても小さいものになるだろう。
まあそれもちゃんと宇宙として成り立たせることが出来たら……だ。ここには今は何もない。何もなく、私だけがいる。
『宇宙として必要な物……か」
それが何なのか今の私には思いつかない。力の総量も有限で……だからこそ……何を生み出すのか……っていうのはとても大切だろう。どうしたらいいんだろう?
「く……空気とか? ってそんなわけないじゃん!? 宇宙に空気なんてないし!? じゃあ宇宙にある空気的なエネルギーで暗黒エネルギー的な? でもそれって結局私のエネルギーだし……」
私程度の頭ではいい案が思い浮かばない。実際私は自分がそんなに賢くないってわかってる。こんな事なら天才たちに宇宙を創造した後の事を話しあってもらっておくんだった。
「けど流石に無理か……だってまさかこんな風になるなんて思ってなかっただろうし……そもそも宇宙の始まり……これはそれ以前の状態かもしれないなんて……」
流石の天才でもこの仮定は出来なかったと思う。それに話し合いの焦点はずっとどうやったら宇宙を創造できるか? であって、そのあとにまでは話が進んでなかった。
だってそれはそうだろう。まずは宇宙を創造できるかどうか? であって誰かが宇宙の創造に一回でも挑戦しないとその先に行けなかったんだ。仮定に仮定を重ねることになるからね。
なのでここから先は本当に何もない。
「私自身からこの場所のエネルギーを生成するってできないのかな?」
よく考えたら使うばかりだった。けど私は始祖である。ならば私自身が生み出せてもおかしくない。だってここに存在してるのは私だけなのだ。私は手を前に出して念じてみる。
(力よ生み出ろ)
すると実際に生み出せた。やった! と思ったけど、それはどうやら効率がよろしくない。確かに出てるが……まるで出が悪い蛇口のようだったよ。




