Σ38
私たちはあれから無言で走ってた。嫌だってね……あの後私が本気で説教してあげたから、二人ともさすがに反省したみたい。そして一つの寂れた小屋にたどりついてた。
「ここにラーゼが……」
もうベールさん突っ込まないね。通信したら何故か私たちの仲間がラーゼの居場所を掴んでたんだよね。もう色々とガバガバだからベールさんもこれはそういう事だと気づいてるんじゃないかな? だからこそ、少し余裕が見えるし。てかベールさんは優秀だしね。いや、フェアリー部隊の面々はアンティカのパイロットの二人を含め、サポートに含まれてる人たち全てが優秀な面々がそろってる。
私くらいだよ平凡なの。だってフェアリー部隊は人類の希望を背負ってるのだ。そりゃあ優秀な人達を集めてるはずだよ。だからまあ何故かこちらの状況を知ってて、こっちの欲しい情報をすでに得てたとしても、優秀だからの一言で済ませられるかもしれない。
「いいか亜子は後ろいろ。俺とカタヤで様子をうかがう」
「はい」
一応の緊張感を醸し出しつつ、私は頷くよ。ベールさんがどこまでわかっちゃってるのか正直謎だけど、こっちからバラす訳にもいかないからね。ベールさんがそれを口にしないのなら、私たちがそれを告げることはできない。
私は銃をベールさんに渡す。ズボンの片側にホルスターして射してたからね。休日でもこれを手放すなんてことはないのだ。危険はいつなん時来るかわからないからね。だから常に武器は携帯してるもの。カタヤさんもベールさんもそれは同じ……のはずなんだけど、どうやらベールさんの武器はラーゼがスッたみたい。証拠はないけど、状況的にそうかなと思う。
ベールさんもデートにでかでかとした銃を持ってくるのはどうかと思ったから、私と同じハンドガンサイズの銃をスーツの内側に仕込んでたみたい。けどそれはいつの間にか消えてたみたい。
必要以上にべたべたしてたのは、落とすのもそうだけど、銃をするのも目的だったのだろう。もしかしたら、前半で落とせてたらこんなことはしなかったのかもしれない。だから私の銃をベールさんに渡すしかない。カタヤさんは近接武器を好んで使うからね。ベールさんは射撃の名手だから銃の方がいいでしょ。私は一応持ってたナイフを持つ。
側面に回って窓からなかの様子をうかがう。けど奥の方は見えない。とりあえず窓から侵入をする。二人は一塊になって、別々の方向を見つつ、警戒を強める二人。そして合図を見て、私も中へ。奥へと進むと、ラーゼが大きな椅子に寝かされてた。そしてその胸には血が……
「あっう……」
変な息の仕方をしてベールさんが膝をつく。えっ何? なんだか過呼吸になってない? いったい何が? ラーゼは多分死んでない。だって胸、よく見ると上下してるし……悪趣味な演出……それをベールさんが気づかないはずがない。けどこの反応は……
「ベールお前」
そう呟くカタヤさん。すると周りからわらわらと黒タイツの面々が出てきた。ここから一体私たちはどうしたらいいの? 倒していいの? ナイフも刀も銃も本物ですが? でもこれはやるしかないよね。




