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Σ37

「おいおい、一体どうしたんだベール? こんなところで寝る趣味でもあるのか?」


 ちょっ!? なんでこの人ボロボロで横たわってる友人に鞭打つようなこといえるわけ? 最近カタヤさんは実は性格が陰険なんじゃないかと私思い始めてるよ。いや、普段はまっすぐなんだよ。それこそ人類の英雄としてふさわしい人だと思う。けど人はそんな一面だけでできてるわけじゃない。どんなに完璧に見える人物にだって意外な一面はあるものなんだ。

 

 まあ私の場合は元から『シスコン』がカタヤさんには張り付いてたから、今更どんな姿見せられても落胆とかないけどね。

 

「カタヤ……お前……」


 何とか頭を動かしてこっちを見るベールさん。顔に細かな砂とかついてるよ。でもそれを気にしてる様子はない。それどころか……

 

「頼む……ラーゼが攫われた。俺のことはいい……早く追いかけてくれ」

「おいおい誰に言ってるんだよ? 任せろ。お前じゃない。僕がラーゼを救ってみせる! ――いて!?」


 私は頭をスッパーーンと叩いてやったよ。もう、この人は……流石の私も怒るよ。なんでベールさんの今のセリフとこの姿見てそんな事言えるのよ。嫉妬しすぎておかしくなったか? とりあえず私はベールさんの傍にひざまずいて魔法を掛ける。

 

「大丈夫です。三人で追いかけましょう。あいつならきっと無事ですよ」

「ありがとう……亜子」


 ズキン――と心に何かが刺さるような痛みが走る。これか……これが罪ってやつか。今まで嘘ついてこんな痛み味わったことなかったけど、こんな弱った人を更に騙すとなると、私の心が耐えられないみたい。とりあえず、私は自分が使える最上級の魔法でもってベールさんを回復してあげる。こんなんで罪滅ぼしになるなんて思わないけど、少しでも贖罪したいんだよ。

 



「どうですか気分は?」

「ああ、随分とよくなったよ」

「服まで直せればよかったんですけど……」


 ベールさんの服はボロボロだ。体の傷は治せても服まではね……どうしようもない。結構高そうな服だけど……

 

「別に服などいいさ。それよりもどうして二人がいる?」

「…………」


 やっぱりそれ気になるよね。だって私たちが丁度いるなんておかしいもんね。私は「えーと、それはですね……」と呟きながらうまい言い訳が出てこないか思案する。けどそんなに私は機転が利く性格ではない。いい言い訳が思いつかずに無言でいると、カタヤさんがベールさんの肩に手を置いて絶妙にイラつく顔してこういった。

 

「そんなの決まってるだろ? お前がラーゼに弄ばれる様を鑑賞してたんだよ」

「ちょっ!? 何言っちゃってるのよバカ!」


 人類の英雄をバカ呼ばわりである。まあシスコンとも思ってたし、どっちもどっちだよね。寧ろシスコンよりはましかもしれない。けど、ほんとなんでバラすかね。私達嫌われちゃうよ? これからやりにくくなったらどうするの? 人種にとって死活問題でしょ。それなのにあっさりバラして……私は恐る恐るベールさんを見る。すると「くっくく」と声を抑え気味に笑ってた。

 

 あれ? 怒ってない? 私達許されてる? 

 

「なるほど、そういう事か……」


 なにがなるほどで、そういう事なのか……するとベールさんはカタヤさんにし返すようにこう言った。

 

「はっきり言えよカタヤ。俺にラーゼが惚れないか気が気じゃなかったんだろ? なんせ、俺の方が実は良い男だからな。なあ、亜子?」

「え?」


 ちょ……ちょっと待て。何振ってくれてるの? おかしいよね。そんな事を話してる場合じゃないよね? 二人とも冷静になろうよ。

 

「おいおい、誰が誰よりもいい男だって? それにラーゼが惚れる? ちょっと自分に自惚れ過ぎなんじゃないか? あいつはそんな簡単な奴じゃない。言ってやれ亜子。どっちが良い男か、一番近くに居る君ならわかるはずだ!」

「わっ……わかるかあああああああ!」


 私は逆切れしつつそう叫んだ。いや、だってね。ここはキレてうやむやにするのが最善手でしょ。てか、そんなの言えるか!!

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