表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

194/2417

Σ29

「う……ん」


 目を覚ますとベッドの上にいた。一体なにがどうしたのだろうか? 私は顔爛種と戦ってたはずだ。いや、あれは戦いなんて呼べるものじゃなかった。蹂躙……それが相応しい言葉だ。それほどまでに手も足も出なかった。アンティカなら、上位種とだってそれなりにやれる――そんな自負というか、希望というか、そういうのがあった。

 いや、私達以外の人種にはまだあるはずだ。寧ろ、アンティカでも手も足も出ないなんて……そんなの認められないだろう。

 

「目覚めたかね?」

「博士……」


 扉からは博士とともに助手の人たちが入ってきた。みんな勝手知ったる面々だ。フェアリー部隊のバックアップの面々だからね。私たちのコンディションにアンティカの整備も彼らが頑張っててくれるから私たちは万全の態勢で戦場に向かえる。そんな中、一人の女性が私の額に手を当てて、さらに脈を測る。

 

「カタヤさんとベールさんは?」

「二人とも無事じゃよ。それでどうだったんじゃ顔爛種は!? データだけでは薄くての。やはり実戦を味わった者の感想が欲しいのじゃ!」


 はは……この人はほんといつも通りだなって思った。もっと他にあるでしょ? 私達死にかけたんだよ? てかめっちゃ頑張ったよね!? 労いの言葉がそろそろほしい。まあすでに諦めてもいるけどさ……

 

「おとう……博士」

「う……うむ、どどうじゃ調子は?」


 あっ、さすがに今回は手酷く絞られてたみたい。彼女の一言で博士が話題を変えたもん。彼女がいなかったらこの子供のような老人はどこまでも突っ走るからね。それで奥さんに逃げられたとか聞いたよ? 少しは懲りたらいいのにね。彼女がなんで母親の方へ行かなかったのか、その疑問は誰でももつ。私は結構仲良くなった時に聞いたら、お金だけは持ってたからって言ってた。

 

 実はしっかりと親の血を受け継いでるんだよね。それを認めたがらないけど……まあけど今はこの親子のことではない。私達はあれからどうなったのだろう。それとここは?

 

「ここは私達の空挺の中です。危険でしたが、あなた達を回収するにはこれしか手がありませんでした」

「まさかアンティカが三体同時にやられるなど、不測の事態じゃったからの! かははははは!」


 なにがおかしいこの爺。こっちは死にかけたわ!! てか自慢のアンティカがぶっ壊されて嬉しいか!? そうなのかって言いたい。

 

「ごめんね、こういう人だから」

「理解してます。けど殴っていいですか?」

「どうぞ」


 簡単に許可くれるからその禿散らかった頭を――と思ったけど、ベッドに居る私は届かない。しょうがないからボディーに拳を突っ込んだ。

 

「ごふ!? お主等……もうちょっと老人をいたわらんかい!」


 ぜんぜん元気じゃん。こいつは殺しても死なない気がする。

 

「博士、亜子もあんなことの後で気が立ってるんですよ」

「まあ博士でイラつくのはいつものことだと思うがな」


 扉が開いてカタヤさんとベールさんが入ってきた。この二人はもう動けるのか。さすが、鍛え方が違うね。てか私が無茶しすぎただけか。まだ体だるいもん。

 

「だが、実際問題これから一体どうするんだ?」

「……博士、アンティカの修復にはどのくらいかかりますか?」


 二人の言葉を受けて、博士は考え込む。アンティカは酷い損傷を受けた。そう早く治るわけない。そうなると私たちは動けない。休暇である。飛び跳ねていい? いや無理だけど。

 

「一月……それまでに何とかさらにパワーアップをして見せよう。そのためにも今、向かってる場所がある」

「どこに?」


 私は素直にそう聞いた。すると博士はニカッと笑いこういった。

 

「ファイラル領じゃよ。そこに儂等は秘密の研究所を作ったのじゃ!」


 秘密って所を強調してそんな事をいったネジマキ博士。ほんとこの人、心が子供だね。男の子って好きだよね。秘密基地。カタヤさんもベールさんもなんかちょっとわくわくした感じだし。まあ、カタヤさんは別の意味でわくわくしてると思うけどさ。

 私はすぐ近くに居る彼女とともに溜息を吐いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ