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Σ6

 塔の付近まで私達は来た。そしてぐるっと一周してみたけど……何故か入り口が見当たりない。どうやら特殊な方法で入る感じみたい。

 

「転送陣が何処かにあるのでしょうか?」

「そうかもしれないけど……そうじゃないかもしれない。今はまだ、なんとも言えません」


 流石に情報が少なすぎる。何人かの兵士たちが背中に背負ってた機械を塔の壁にあてて何やらやってる。彼らは補給と援護の役割をもった兵士だから、色々と用意してるんだよね。だからそれを使って塔を調べてるんだろう。けど、あれもそこまで当てには出来ないけど……一番確実なのは、あの大砲の様な物が出てる所から中に入る事だろう。あそこは攻撃するためにぽっかり空いてる。あそこからなら入れるだろう。けど、流石に私以外であそこに侵攻出来るかな? 

 

 一応ロープ使って登る訓練とかはしてるはずだけど……この人数でノロノロと登ってたりしたら、何されるか分かったものじゃない。反撃は今の所、あの大砲とカタヤさんが戦ってる緑人の生き残りだけしかないけど、ここにはまだ緑人が居るはずで、そしてこの塔には何かある。多分私達が探してるものも……だからこそ慎重に行動しないと……

 

(だって今は皆、私の指示待ちだからね)


 ここは戦場で、私は何故か指揮官的なポジションについてしまってる。つまりは今ここに居る皆に何か起きたら、それは私の責任ということになる。そんな重い事……絶対に背負いたくない。誰かが死ぬなんて絶対に駄目。でもここでいつまでも手をこまねいてる訳にもいかない。ここはとりあえず周りの建物を探して転送陣を探すか? けどそれはあまりよくない。

 だってそもそもがあるかどうかも分からないんだし、時間のムダになる可能性の方が大きい。扉が無いからって転送陣を使って入ってるとは限らないわけだしさ。この塔の壁には薄汚れちゃってるけどなにやら文字のような物がビシっと掘られてる。これになにかちゃんとした意味があるのなら……この塔自体に仕掛けが有ってもおかしくない。

 

 それをあの装置で解析できれば万々歳だけど……多分ムリだろう。期待できない。

 

(となると、やっぱり案は二つしかない)


 一つ目はこの塔の壁をよじ登ってあの砲台から中に侵入する。けどこれも当然リスクはある。外の緑人はカタヤさんとやりあってる奴だけみたいだから、攻撃を受けるって事はそうそうないとは思う。けど、あそこは明らかにここが侵入経路ですよって主張してるとも取れる。つまりは罠とかがある可能性大。罠の探知くらいなら私にも出来る。

 けど、解除とかは出来ない。それには複雑な魔法の知識が必要だからだ。そもそもが人種は魔法にそんな強くないからね……私はラーゼの力を受け取ってるから魔法も普通に使えるけど、突出してすごい訳じゃない。罠がとても複雑でそして侵入者絶対殺すマンだと、死者が出るのを覚悟しないといけなくなる。そしてそれが自分の可能性だってある。

 

 私は自分が死なないようにって頑張ってきた。こんな物騒な世界だもん。何が起こるかわからないじゃん。ただの女子高生が異世界転移しちゃいましたってノリだけじゃ、やっていけないってわかったよ。だからこそ、前の世界では考えられなかった訓練とか受けて、勉強だっていっぱいした。これには全部意味があったから、耐えられた。

 生きて向こうの世界に帰る――それは明確な目標だったからだ。

 

 向こうでの勉強は実際、なんでやってるのかよくわからないレベルだった。将来とかいわれても、なんとかなるでしょ? 的な感じが蔓延してるし……大体平和な向こうでは切羽詰まるなんて事がないんだもん。明確に敵と呼べる存在は居なくて、長生き出来る下地はある。事故にでも巻き込まれない限り、死ぬことなんて無い。いきなり自分の人生が終わるだなんて思ってる人はいない。

 

 けどここは違う。周りは敵だからけで、人種なんてこの世界では簡単に死ぬ生命の筆頭だ。皆が毎日を必死に生きてる。必死に生きて未来をつかもうとしてる。こうなると、なんで勉強なんてやってるんだろう? なんて事は思わない。明確に生きるために……生き続ける為に必要な知識だから私達をそれを学ぶんだ。

 

 ここに居る兵士の皆は自分の『死』を覚悟してここに居るだろう。私だって言葉ではちゃんと誓いを立てた。けど実際に死にたい奴なんていないでしょ。みんな生きて帰りたいはずだ。皆が私の間違いで死んだとしても、責めたりはしないでくれるだろう。でも……それを背負うだけの覚悟は私にはないんだよ。私が背負えるのはいつだって私の命だけ。

 

 だから私はもう一つの案を採用する。

 

「今から二個分隊でカタヤさんの支援に向かいます。緑人を無力化したら、尋問してこの塔の入り方を聞きましょう。残りの者は解析と周囲の警戒に努めてください」


 そうまずはカタヤさんに戻ってきて貰う。そうすれば、私が今背負ってる物をカタヤさんに移せるのだ。後は彼の判断に任せればいい。これぞ、the・責任回避である!

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