H331
「づっ! うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
王の剣は折れた。けどラジエルの奴は止まらない。自分の傷だって気にしない。てか……折れたはずなのに王の剣の存在感は逆に強くなってるように感じる。事実王の剣の折れた先にその力が集まってるように感じる。
王の剣の価値はその物体そのものにあったわけじゃないのかしれない。その存在というか何か核のようなもの自体が王の剣を王の剣たらしめていた――のかも。てかそんなことを考えてる場合ではないね。無くした刀身の先に収束した力が私に迫ってる。これまでの経験上、王の剣を受けてはいけない。
私がどんなに防御力に優れていようともなぜか王の剣をそれを無条件に突破できるみたいだからだ。私特攻の剣なのかな? と思わなくもないが、実は王の剣はこの世界の歴史上に度々登場してるからそれはないといえる。
まあ実際、その度々登場する王の剣と、ラジエルが持ってる王の剣が同じものだという証拠はないけど。もしかしたらだけど、オウラムが特殊な技術を持って作り上げた剣を王の剣と呼んでるだけなのかもしれない。
実際オウラムには負け犬どもが集まってる。その中には珍しい種族とかもいるだろうし、何か特殊な能力を持った種がそういう技術を授けたとしても不思議じゃない。
この世界の種は、大体閉鎖的で交流なんてほぼ無いわけだけど種の滅亡が関わってくるとなれば考え方だって変わると思う。オウラムじゃなく、私たちに合流した種たちだって最初はいろいろと警戒してて見せてなかった部分は多かった。
けどまあ、オウラムじゃなく私たちを選んだって事でそこら辺から違ったのかもしれないけど、様は私たちに合流した種たちはある意味開放的な方だったみたいな? 気はする。
それに比べてオウラムの方はもっと原始的で閉塞的な奴らが集まってるよね。
「とう!」
私は一気にラジエルから離れるたびに後方へと引く。こういうとき格好良さを優先してギリギリで躱す――なんてことはもうしない。なんかゾクッとした悪寒がしたからこういうのはそういう直感に素直に従うことにしてる。
「にがさんぞ、世界樹の巫女」
むむむ!? 誰の許可取って私を後ろから抱きしめてるわけ? そんな許可出した覚えないけど!! てか、こいつ何個腕があるわけ?
「ラジエル! 俺ごと貫け!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
どうやらラジエルに躊躇いはないようだ。昔のこいつならきっと迷ったはず。でもここに来るに当たってそういう甘さは捨ててきたのかもしれない。上等じゃん! 私は銃を手放した。けど次の瞬間、手放した銃から弾丸が放たれて私を羽交い締めにしてる奴を貫く。
「ぐおあああ!?」
かなりのダメージを負った筈なのにこいつは放さない。ちょっ、マジで信じられないんですけど。確かに私と心中できるのはこいつにとっては大手柄なのかもしれない。
でも私にとっては汚点でしかない。
「させるかぁぁぁぁ!!」
私はそう言ってウサギの手をロケットパンチのようにラジエルにはなった。




