H328
クリスタルウッドの足下へと私は来てる。まあアナハイム自体がクリスタルウッドの足下にあるわけだけどね。クリスタルウッドの恩恵でこの都市は発展したというか、ファイラルという領地は肥沃の大地になったわけだし。
まあけど最高にでっかいクリスタルウッドの足下にあっても、この土地は暗いなんて事にはならない。普通は超絶でかい木が側にあったら太陽光とか遮って暗くなりそうなものだけど、クリスタルウッドはそこは世界樹と呼ばれる特別な木だ。
それは特殊というか、そもそもがクリスタルウッドは白く綺麗な木だ。だかららだろうその葉もとても透明感がある。そのおかけでいくらもさもさしてたとしても、ちゃんと足下まで太陽光を通してくれる。
「ここから見ても変化はないように見えるけど……」
クリスタルウッドは雄大にこの大地に根付いてるように見える。でも、そのとき一つの葉が私の側に落ちてきた。それは紛れもなくクリスタルウッドの葉っぱだ。
「こんなこと一度も無かったのに」
異常事態……それはどうやら本当みたいだ。たった一枚の葉が落ちる。それのどこが異常なのかと思うかもしれない。でも世界樹であるクリスタルウッドにとっては異常なのだ。だってこんなことこの木が雄大にそびえるようになってから一度も無かったと思う。
世界樹が葉を散らすのは特別な理由の時だけだ。何せクリスタルウッドにはそのすべてに純なマナが通ってる。それもそこらの植物に宿るより高密度な奴だ。
だからこそ、クリスタルウッドの枝一つ、葉一つにはとてつもない価値がある。何せクリスタルウッドの葉一つで最高級の薬がいくつ作れるかって言うね。他の種族ならついばむだけでその力を飛躍的に高めることができる――なんて言い伝えもあるくらいだ。
実際あるんだから試さない馬鹿はいないだろう。私の側近たちは皆ついばんでる。それによって確かに飛躍的に力は増した。言い伝えは本当だったみたいだ。
でもグルダフやヘビが獣人へと掛けられた呪いを破ったかと言えばそんなことはなかった。今のところ獣人の呪いを克服したのはラジエルの奴しかいない。
あいつらは獣人のままだからね。まあ見た目的に変化があるかなんて私たちにはわかんないんだけど。
「ふむ……」
私は自分の足下に落ちてきた一枚のクリスタルウッドの葉を取る。するとクリスタルウッドが訴えかけるように、映像が頭に流れてきた。その映像はラジエルと後数人の種がクリスタルウッドに迫る映像だった。
「やっぱりあんたなんだ。うさぎっ子いないしあの子を献上しに来たのならいい心がけって思ったのに……わざわざ敵の中枢に乗り込んでくるなんてね。今度こそぶっ殺してあげる」
私はそうつぶやいて落ちたクリスタルウッドの葉を自身の中に取り込んだ。とりあえず敵の正体はわかった。この情報は共有しておいた方がいいだろう。




