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H322

「待ちたまえ! どこに行こうというんだい? 彼女へまだ一言も謝罪をもらってないよ」

「はあ?」


 私は思わずイラっとして、美少女にあるまじき不機嫌な声を出してしまった。だってクリスタルウッドが私を呼んでるんだよ? これは異常事態だ。 こんなことは今まで一度もなかった。その異常事態がおきてるのに、こんな一般庶民風情に構ってる時間はない。


「随分と上品にふるまってたようだけど、本性が出てきたな。でもそういう女性嫌いじゃないよ」


 何言ってるんだこいつは? 私はあんたの事が嫌いでたまらないが……さっきまではなるべく穏便にどうやって帰ろうかと考えてたが、今の私にはそんな余裕はない。プリンよりもクリスタルウッドの方が大事なのは間違いない。

 いや、プリンも大事だけど……


「何も自分達は君を責めたい訳じゃない。ただ、どんな状況であれ、上には上に立つ者の立場があると思うんだ。どこぞの高名な貴族の方だろう? それならば、自分の評判を落としたくはないのでは?」


 貴族を貶めたのも問題だったか? とかちょっとおもった。だって昔なら平民たちが明らかに貴族とわかるような奴にこんな態度はとらなかったはずだ。

 今は道理とか常識、法律なんかが優先される国になってるからね。貴族であろうとちゃんと裁かれる国だ。そんなの普通……と思われるかもしれないが、そうじゃないところなんてのはたくさんある。


 それこそ身分って奴がはっきりしてれば、それだけ上には甘く、下には厳しくなっていくのだ。事実、カタヤが王になる前はかなりの権限を貴族たちは持ってた。それこそ自分たちの領ではそれこそやりたい放題だ。

 もちろんちゃんとした経営をしてた領主もいたけど、酷いところなんて領民全員奴隷みたいな所だってあった。貴族に平民は絶対に逆らえなかった時代だ。


 それはつい最近まであったんだけど……忘れるのがお早いようで。まあその変化の適応力に助けられてたわけではあるが……こうも堂々と私にものを言うとは……今でも勘違い貴族はまだいるし、そう言う奴ら程、気に入らない奴らを消す術なんていくらでも持ってるものだよ。


 それでもきっと、こいつには正義感って奴があるんだろう。そして自己肯定感と承認欲求かな? 


「私は自分の評判が落ちるなんて微塵も思ってない。だって私には誰も逆らえないからよ」

「はは……それは随分と……大きく出たね」


 もう色々と面倒だからね。緊急事態だからこいつらの非難に付き合ってやる場合じゃないんだよ。私は歩き出すが、やっぱり周囲の奴らが壁になってる。


 男どもが私の体を間近で見てなんか下卑た笑みを……まあ仕方ない事だけど……生存本能が高まると性欲も強くなるらしい。


「どきなさい」

「どこに行こうというんだい? ここから逃げ出すなんて無理だよ」

「そんなの私には関係ないわね」

「逃げるな!」


 きざったらしい奴が私へと手を伸ばして肩に触れようとした時だった。、カバンから出てきたもう一匹のぬいぐるみがその手を振り払った。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」


 そしてその力でそいつは吹っ飛んだ。壁まで……ご愁傷様。死んだかな? まあどうでもいいことだよ。私の邪魔をしたのだ。同情の余地はない。寧ろ罪だし。

 それは贖罪だと思ってもらおう。

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