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H306

「もし」


 私は変な言葉で彼らに気づいてもらう事にした。プリン伯爵たちは私を見る。質素だけど、見るものがみれば最上級の素材で作られたとわかる服と私の完璧な体。そしてその雰囲気でプリン伯爵は何かを察したのだろう。

 さっきまでこのタワーの係員に横柄にふるまっていたが、私にはいきなり手を擦りながらゴマすり出した。貴族としての洞察力とそして生き残るための勘って奴もどうやらこの人は悪くないらしい。


 まだ私は帽子も眼鏡もとってない。なので実際私がラーゼとはわかってないはずだ。でも下手の態度にまずは出た。向こうから見たら正体が掴めない私なんて、ただの小娘と思われても仕方ないのにね。


 事実、私をただの可愛い町娘とか思ったやつもいた奴だし……まあそいつらは今頃戦場だけど。やっぱりああいう奴等とは違うらしい。会社を大きくするのだって、知識もそうだけど運や勘って奴も大事だろうしね。今やプリン伯爵はそれこそプリン銘菓でそこそこ有名だが、その前から有名かなんてしらないし、彼の手腕でプリン銘菓として有名になったのは確かだろう。

 きっとその勘が私に対して反応したんだろう。なにせ私偉いし、隠してても隠し切れない美貌があふれてるからね。


『只者じゃない!』


 ときっとプリン伯爵もおもったんだろう。


「なんでしょうか? どこぞの貴族のお嬢様とお見受けしますが?」

「いえいえ、ただ単に気になっただけですよ。横柄な態度をとってたその理由がいささか気になってしまって」


 私はそういって存外に「私は色々と気づいてる」という事をアピールしてみた。けど、それだけじゃなプリン伯爵も困った事を打ち明けてはくれないみたいだ。


「なんと、これは見苦しいところを見せてしまいました。お恥ずかしい限りです」

「こんな状況ですし、自分の命は大事ですからね。仕方ない事ですよ」


 私はそういって優しく彼を許してあげる。自然と、プリン伯爵と私はどっちが上か……という立場が出来上がってる。彼は自然と下手に出て、私は上から見下ろしてる。

 正体はバレてはない筈だけど、自然とそうなってるんだから私からにじみ出てる高貴なオーラがきっとそうさせるんだろう。ごめんね高貴過ぎて。まあでも都合はいい。


「そういっていただけると助かります」

「しかし、自分の命の為……ではないんですよね?」


 私はそういって従業員たちが束になって背に隠してる箱の方に視線を向ける。まあ帽子と眼鏡でそれはわからないだろうけど、ちょっと首をうごかしてそっちを見たから、プリン伯爵達は私がそれの存在に気づいてる事を悟っただろう。


 なにせこそこそと近づいて最初にそれを見つけてたからね。


「何か大切なことがおありなのではないですか?」


 私は「いってみなさい?」的なオーラを出しつつそう告げた。

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